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ミニチュアダックスのマラセチア外耳炎とは
執筆者:ナルセノゾミ先生
動物看護士、愛玩動物飼養管理士
「最近、耳垢が増えた」
「耳垢がベタついている」
「なんともいえないにおいがある…」
あなたの愛犬は、こんな耳のトラブルはありませんか?
暖かくなってくると増えるのが、マラセチアによる外耳炎。
ダックスフンドなどの垂れ耳、ロングコートの犬種では、特に多い耳の病気です。
今回は、ダックスフンドによくみられるマラセチア外耳炎とその治療方法、早く良くするためのポイントについてご紹介します!
マラセチア外耳炎とは
マラセチアは真菌(カビ)の一種である酵母菌のことです。
このマラセチアが耳の中で異常繁殖し、外耳炎になることがあります。
そして、犬の耳の構造上、外耳炎はよくみられる耳の病気です。
外耳炎の原因はさまざまですが、マラセチアによる外耳炎のことを、マラセチア外耳炎と呼びます。
マラセチアそのものは無害な菌で、犬の皮膚に一定数存在する常在菌です。
ところが、免疫が低下していたり、極端に増殖してしまうことで、外耳炎をはじめとしたさまざまな皮膚炎を引き起こします。
ちなみに、外耳炎の中で最も多い原因が、このマラセチアです。
マラセチア外耳炎が、ダックスフンドに多い理由
マラセチア外耳炎の好発犬種として、まずダックスフンドが挙げられます。
ペット保険での犬種別保険請求ランキングでは、ダックスフンドでは全年齢での1位が、外耳炎でした。
外耳炎の原因はマラセチアだけではありませんが、ダックスフンドが外耳炎になりやすい理由があります。
大きな垂れ耳で、通気性が悪くなりやすい
ダックスフンドの特徴のひとつが、大きな垂れ耳。
また、人気のロングコートでは、耳の中にも毛が生えており、耳の中の通気性が悪く、外耳炎を引き起こしやすいんです。
また、マラセチアはジメジメとした環境を好みますから、ダックスフンドの耳の中は、マラセチアにとって住みやすい環境になるのです。
皮膚トラブルを抱えやすい
ダックスフンドは、脂漏症といって、全身の皮膚から皮脂が過剰に分泌される体質で、皮膚トラブルを抱える子も多いようです。
マラセチアは皮脂を好む性質があるため、体質によりマラセチアが集まりやすいことも、理由の1つと言えるでしょう。
アレルギー体質が多い
個体差はありますが、ダックスフンドにはアレルギーやアトピー体質の子も、比較的多い印象があります。
アレルギー反応により免疫力が低下したところで、マラセチア外耳炎になってしまうことも。
ときには、マラセチアがアレルゲンとなり、外耳炎だけでなく、全身症状が出てしまうこともあります。
アレルギー体質を持っていたり、皮膚が弱い傾向にある場合は、耳の状態も注意してチェックしてあげると安心ですね。
マラセチア外耳炎の症状と行動
マラセチアが原因で外耳炎になるばあい、痒みや痛みだけでなく、黒い粘り気のある耳垢が大量に出ることが特徴です。
主な症状と、耳が痒いときにダックスフンドによくみられる行動があるので、そちらも合わせて解説していきますね。
黒いベタベタした耳垢
マラセチアによる外耳炎の症状の特徴として、黒いベタベタとした耳垢が大量に出ることが挙げられます。
耳垢に粘り気があり、同時に炎症もおこっているため無理に取ろうとしても犬は痛がります。
耳掃除をしても黒い耳垢が大量に出る…という場合は、真っ先にマラセチアによる外耳炎を疑います。
甘ったるいにおい
マラセチアは酵母菌に分類されます。
そのため、耳から酵母菌独特の甘ったるいにおいがすることも特徴。
耳垢の脂を養分にしてどんどん増殖するため、強いにおいもマラセチアを疑う理由となります。
強い痒み
マラセチア外耳炎になると、犬は耳が痒くなります。
痒みを取ろうと壁や家具に耳をこすりつけたり、痒そうにしていたら外耳炎の可能性ありです。
ダックスフンドは垂れ耳のため気づきにくいですが、耳垢同様、耳をめくってみると赤く炎症を起こしていることがほとんどです。
しきりに首元を掻く
マラセチア外耳炎は耳が痒くなると先にご説明しました。
わかりやすく耳を掻いていれば「耳が痒いんだな」とわかりますが、ダックスフンドは足が短い犬種です。
耳を掻こうとしているのに、足が短く届かないため、首を掻いているように見えることがあります。
しきりに痒がるが、その部分には異常がない、という場合でも、本当は耳が痒いのかもしれません。
マラセチア外耳炎の治療方法
マラセチア外耳炎に対しての治療方法は、症状によって次のようなものがあります。
内服薬(痒み止め、抗生物質)
外耳炎からくる痒みは、犬にとってストレスになります。
そのため、まず不快な痒みを薬で和らげることが多いです。
また、マラセチアの繁殖を抑えるために抗生物質が出されることもあります。
点耳液
点耳液は、耳の中に直接数滴落とすお薬です。
溜まった耳垢を洗浄してから必要量、滴下します。
簡単なようですが、嫌がって暴れる子もいますから、飼い主さんもしっかりお薬が落とせるようになる必要があります。
マラセチア外耳炎の治療期間
治療期間は、症状の度合いや回復力など個体差がありますが、1ヶ月程度は続く場合が多いです。
重度の症状や、基礎疾患の状態も悪い場合は、さらに長い期間の治療が必要になることもあります。
1、2週間ごとに経過をチェックしたり、症状に合わせた治療方法にシフトし、完治を目指しましょう。
症状が治まっているようにみえていても、まだ治ってないこともあるため、獣医師の指示に従って、最後までしっかりと治療を続けてくださいね。
マラセチア外耳炎が慢性化すると…?
マラセチア外耳炎の再発を繰り返したり、症状が慢性化すると、耳の皮膚が厚くなることもあります。
すると耳道が細くなりますので、耳が聞こえづらくなったり、耳垢が詰まりやすくなったり、良くないことばかりが待っています。
また、適切な治療をせずに放っておくことで、外耳炎が進行し、中耳炎、内耳炎…と炎症がどんどん耳の奥に進んでいくことも。
炎症が奥にいけばいくほど痒みや痛みでストレスになりますし、平衡感覚が薄れたりさまざまな障害に繋がります。
当然、治りも遅くなりますし、場合によっては、完治が難しいところまで症状が進むケースもあります。
外耳炎そのものは犬にはよくみられる症状で、命に関わる病気ではありません。
しかし、後遺症が残ったり、後遺症により二次的に他の耳の病気を誘発することもありますから、症状が出たら必ず動物病院に連れていってあげてくださいね。
マラセチア外耳炎を早く良くする3つのポイント
マラセチア外耳炎は治療に時間がかかるとはいえ、なるべく早く治してあげたいですよね。
しかし、良かれと思ってやっていたことが、実は症状を悪化させてしまう要因になってしまうこともあります。
そこで、マラセチアによる外耳炎を良くするためのポイントを3つ、ご紹介します。
耳掃除のしすぎはNG
マラセチアによる外耳炎では、黒い耳垢が大量発生します。
汚れや臭いの原因ですから、気づいたらこまめに除去してあげたいと思う飼い主さんは多いと思います。
しかし、外耳炎を引き起こしている場合、耳掃除のしすぎは炎症を悪化させてしまう危険性があります。
もちろん、耳垢の除去は大切なことですが、細い綿棒でこすってしまうと、耳の中を傷つけてしまうこともあります。
上手な耳掃除のコツは、耳に洗浄液を数滴落とし、耳の根元を優しく揉み、犬が首を振って出てきた汚れを優しくふき取ること。
犬の耳の皮膚は薄く、外耳炎は犬にとって強い痒みや、ときに痛みにまで発展するので、優しく丁寧に扱ってあげましょう。
耳の中の湿気を溜めない
マラセチア外耳炎にとってジメジメとした湿気は禁物。
そもそも犬の耳の中は通気性が悪いため、マラセチアの繁殖を防ぐためにも蒸れないような工夫が必要です。
そこで気を付けたいのが、耳の中に生えている毛のケアです。
定期的に抜くようにし、耳の中の通気性を少しでも良くしましょう。
また、マラセチア外耳炎になっているときは、耳回りの毛も短くカットするとお手入れも楽になります。
耳の後ろ側の毛も短くするだけでも耳の中の湿気が逃げるので、短くカットしてもらうことをおすすめします。
ご自宅でシャンプーをする時も、耳回りはしっかりタオルドライしたのち、ドライヤーを離してきちんと乾かすことも重要です。
免疫を高める
マラセチアは目には見えませんが、わたしたちの生活の中に当たり前に存在する、無害な菌です。
そのため、マラセチアそのものとの接触を完全に遮断することは不可能ですし、接触したからといってマラセチア外耳炎になるわけではありません。
マラセチアに感染するということは、体の免疫が低下している可能性も考えられます。
基礎疾患やアレルギー体質であれば抵抗力は落ちますし、ストレスや栄養の偏りなどでも、抵抗力が低下することもあるんです。
そのため、適度な運動などでストレス解消を図るとともに、サプリメントの活用もおすすめです。
【キングアガリクスペット100】は、体の免疫機能を活性化させてくれるペット用のサプリメント。
アガリクスは体にとって無害ですが、真菌と似た構造を持っているため、取り込むことで免疫細胞が働きやすくなる作用が期待できます。
こうした免疫機能を高めるサプリメントを取り入れてみてもいいでしょう。
「耳が臭う」と思ったら、すぐに動物病院へ!
大きな垂れ耳を持ち、外耳炎になりやすい特徴のダックスフンド。
・黒いベタベタした耳垢
・甘ったるい独特な酵母臭い
・しきりに耳(周辺)を痒がっている
このような症状や行動がみられたら、マラセチアによる外耳炎を引き起こしているかもしれません。
マラセチア外耳炎は、早期発見するほど治りが早く、その分治療期間を短くすることもできます。
異常に気付いたら、早めに動物病院に連れて行きましょう!
執筆者:ナルセノゾミ先生
動物看護士、愛玩動物飼養管理士
仙台総合ペット専門学校で、動物看護・アニマルセラピーについて学ぶ。
在学中は動物病院・ペットショップの他、動物園での実習も経験。
犬猫、小動物はもちろん、野生動物や昆虫まで、生粋の生き物オタク。
関わる動物たちを幸せにしたい、をモットーに活動しているWebライター。