チワワの脱毛症の原因・症状、日常ケアのポイント【動物看護士執筆】

チワワの脱毛症について

執筆者:竹内Coco先生

動物看護師、トリマー

世界最小の犬種として知られているチワワ。小さい体と潤んだ大きな瞳が愛らしく、非常に人気のある犬種です。そんなチワワですが、皮膚トラブルや脱毛トラブルの多い犬種でもあります。そこで今回はチワワの脱毛症についてご紹介していきます。

チワワの脱毛症についてご紹介する前に、まずは簡単にチワワの特徴についてご説明します。

チワワの特徴

チワワはメキシコのチワワ州が原産の犬種であり、名前の由来にもなっています。世界最小の犬種として知られており、標準的な体重は1.5 kg ~3 kg程度しかありません。

大きな目と大きな立ち耳をしています。また、頭部はアップル・ヘッドと呼ばれ非常に丸みを帯びた形をしていますが、近年では頭頂部の大泉門が閉じ切っていない犬もみられます。

非常に華奢でマズルが短いところも愛らしいポイントではありますが、その見た目に反して性格は機敏で勇敢。大きな犬にも向かっていくことがあります。また、注意深く、神経質な性格でもあります。

チワワの被毛の特徴

チワワには、スムースコートチワワとロングコートチワワの2種類がいることは有名ですよね。元々は「テチチ」と呼ばれる犬が祖先犬とされていますが、スムースコートが主流だったようです。

その後、異種犬種との掛け合わせにより品種改良が重ねられて現在のチワワに近い形になり、長毛のロングコートチワワも登場しました。

短毛のスムースコートチワワは、被毛に光沢があり、短い毛が密集して生えています。短い被毛は一見堅そうにも見えますが、スムースコートチワワの被毛は柔らかいのが特徴です。

長毛のロングコートチワワの被毛は、細く絹状になっていて、わずかにウェーブがかかっています。耳の後ろや首元、尻尾や四肢の後ろ側に飾り毛と呼ばれる長い被毛を持っているのが特徴です。

チワワはどちらのタイプもダブルコートの犬種です。ダブルコートとは、上毛(トップコート)の下に、下毛(アンダーコート)を持つ犬のこと。下毛を持たないシングルコートの犬に比べて、換毛期の抜け毛が多いものです。

換毛期にチワワの毛が多く抜けるのはごく自然なことですが、一部分のみが脱毛したり、異常に毛が薄くなったりする場合には脱毛症を疑う必要があります。

チワワはカラーバリエーションが実に豊富です。クリーム、ブラックタン、レッド、ホワイト、チョコタン、ブルータンなど様々な色の組み合わせがあり、個性が出ることも魅力の一つですね。

チワワの皮膚の特徴

犬は元々人と比べて皮膚が薄いものですが、体の小さいチワワは特に皮膚が薄い子が多く、皮膚病に関する疾患が多いです。

犬は薄い皮膚を守るために被毛が生えていますが、その被毛が抜け落ちてしまうと、皮膚を保護できなくなってしまいます。

また、成犬の間に肥満傾向のあるチワワでは、皮膚が脂っぽくなり皮膚トラブルを起こしてしまうケースが多いでしょう。

チワワに脱毛トラブルが多い理由

細い四肢

チワワは体が非常に小さく、それに伴いとても細い四肢をしています。脱毛とは関係のないように思える細い四肢。ですがこの細い四肢は、膝蓋骨脱臼を起こしたり、関節を痛めたりしやすいものなのです。

こういった外因的痛みやしびれから、肢を気にして異常に舐めてしまうケースがあります。執拗に舐めることで、赤みや炎症、脱毛を引き起こしてしまうことは珍しくありません。

太りやすい

体が小さい点が特徴のチワワですが、実は太りやすい傾向にあるとされています。そのため、栄養過多になると体全体が乱れ、皮膚疾患を発症する原因となっています。もちろん皮膚疾患だけでなく、肥満は様々な病気の元となりますので注意が必要です。

チワワの脱毛症の主な原因、症状、治療法

チワワによくみられる主な脱毛症の原因、症状、治療法についてご説明します。

マラセチア皮膚炎

チワワに特によくみられる脱毛を伴う皮膚病がマラセチア皮膚炎です。マラセチア皮膚炎とは、皮膚にいるマラセチアと呼ばれる酵母菌(カビ)が原因となり起こるものです。

皮脂を餌にしているので、皮脂の分泌が過剰になっていたり、免疫力が低下していたりすると異常繁殖し、炎症を起こします。

症状

赤みや痒みを伴い、慢性化すると脱毛します。皮膚がべたつくことが多く、脱毛した部分は黒ずみ分厚くなってきます。独特な脂っぽい嫌な臭いを放つのが特徴です。

治療法

シャンプーによって物理的にマラセチア菌を洗い流すことが効果的です。そのほかには抗真菌薬を投与し、菌の繁殖を防ぎます。痒みの程度がひどい場合にはステロイドなどを使用し、痒みに対する治療も行います。

ストレス性脱毛症

ストレスが元となり脱毛するケースは人だけでなく、犬にも起こります。原因は、毛包が委縮することです。チワワは神経質な性格でもあるのでストレス性脱毛症を起こしやすい犬種と言えるでしょう。

症状

痒みや炎症はなく、円形に脱毛します。顔面に出ることが多いですが、全身のどの部分でも脱毛する可能性はあります。ただし、犬はストレスによって同じ場所を繰り返し舐めることがあり、その場合は肢端舐性皮膚炎という炎症を起こすこともあります。

治療法

毛包虫症や皮膚糸状菌症など、脱毛以外に痒みや炎症のない皮膚炎の可能性がないか、検査が行われます。

局所的にステロイドなどの塗り薬で改善するケースもありますが、ストレスの原因となるものを取り除いてあげることが重要な治療となります。

肢端舐性皮膚炎

肢端舐性皮膚炎とは、様々な原因によって犬が四肢を舐める行為を繰り返すことで起こる炎症のことです。過度に舐めることで、脱毛や出血がみられます。

肢端舐性皮膚炎の原因には、アレルギーや細菌感染による痒み、ストレスが原因となっていることが多いです。またストレス性脱毛症と同じく、四肢を舐める行為が炎症や脱毛の原因となります。

稀に、ケガや痛み、しびれが気になって舐め続ける場合もあります。チワワのような小型犬の場合、関節を痛めていることから四肢を舐めているケースもあるでしょう。

症状

赤み、出血、脱毛、炎症

治療法

ストレスや関節の痛みなど、目でみて分かりにくいものが多いので、アレルギー疾患やその他の皮膚病が潜んでいないかの検査を行います。その結果特に原因が見つからない場合、原因を特定し、取り除くことが必要です。

炎症を起こしている患部では細菌感染が起きていることが多いので、抗生物質などが処方されるでしょう。

副腎皮質機能亢進症

別名クッシング症候群と呼ばれています。ホルモンを出す副腎そのもの、もしくはホルモンを出すよう指令する脳の下垂体に異常が起こりホルモンを出しすぎてしまう病気です。

異常の多くは腫瘍であり、副腎皮質機能亢進症の8~9割は脳の下垂体異常によるものといわれています。

症状

初期症状は多飲多尿、食欲増進、お腹が膨らんでくるなどで、気付きにくいものです。その後、痒みのない左右対称の脱毛がみられます。

治療法

副腎に腫瘍がある場合は手術によって取り除くことも可能です。脳の下垂体に腫瘍がある場合の手術はなかなか難しいため、ホルモンを抑える薬を投与するなど内科的療法が行われます。

チワワから脱毛症を遠ざける5つの日常ケア

皮膚・脱毛のトラブルが多いチワワ。愛犬から脱毛症を遠ざける日常ケアのポイントを5つご紹介します。

こまめなシャンプー

チワワはマラセチア皮膚炎になることの多い犬種です。マラセチア皮膚炎の予防にはシャンプーが効果的。定期的にシャンプーを行って、皮膚を清潔な状態に保ってあげましょう。1ヶ月に一度はトリミングに出してあげると良いですね。

マラセチア皮膚炎を起こすマラセチアは過剰な皮脂を栄養とします。脂っぽい皮膚のチワワは、もう少し頻繁にシャンプーを行うとマラセチア皮膚炎の予防に繋がります。

チワワは体が小さく、またロングコートチワワであっても全身が床につくほどまで伸びるわけではないので、自宅でのシャンプーも比較的しやすいでしょう。月に2回程度シャンプーをしてあげると健康的で清潔な皮膚を保てます。

ただし自宅でシャンプーを行う際は、しっかりと根本まで乾かしてあげてください。地肌が濡れていたり湿ったりしていると蒸れてマラセチア菌が増加してしまいます。他の雑菌が繁殖し皮膚炎や脱毛の原因ともなりますので注意が必要です。

皮膚病を起こしていない場合は過度なシャンプーも控えましょう。洗えば洗うほど良いというわけではなく、洗いすぎると必要な皮脂まで落としてしまい、皮膚のバリア機能が低下してしまうケースもあります。治療中であれば獣医師の指示に従った頻度で洗ってあげましょう。

栄養バランスに気を付ける

脱毛症には栄養バランスも大きく関係してきます。総合栄養食として市販されている安価なドッグフードもありますが、安価なものにはそれなりの理由があるでしょう。嵩を増すために、原材料の多くに穀物を使用しているものが多い傾向があります。

犬にとってタンパク質は重要な栄養素です。タンパク質は、皮膚や被毛を作るために必要な栄養素であり、不足すると皮膚が弱くなったり、毛艶が悪くなったりしてしまいます。

また、筋肉を作るためにもタンパク質は必要です。チワワのような小型犬は肢が細く、関節を痛めやすい犬種。筋肉が不足しているとこれらの病気のリスクも高まってしまいますので、タンパク質の摂取量には気をつけてあげる必要があります。

そのほかの栄養素も不足していると低栄養状態になり、皮膚・被毛の状態が悪化してしまいます。ビタミンには多くの効果があるのでぜひ取り入れたい栄養素です。ビタミンEやCは抗酸化作用があり、老化を防いでくれます。そのため皮膚・被毛を若々しく美しく保つことができます。

ビタミンB群であるパントテン酸やナイアシン、イノシトールなどには、皮膚のバリア機能を高める効果があります。さらに炎症を抑える効果のあるEPA、DHAなどの不飽和脂肪酸を含んでいるフードを選んであげると良いでしょう。

チワワは太りやすい犬種ですが、急激なダイエットは禁物です。急激なダイエットは栄養不足になり、同じく毛艶の悪さや脱毛の原因となり得ます。

また、愛犬のためを思って手作り食を与える飼い主さんもいらっしゃいますが、人と犬では栄養バランスが全く違いますので、犬の栄養バランスをしっかりと学んでいないと栄養が足りていないケースもあります。

手作り食を与えたいときにはドッグフードにトッピングするなど、主食をフードにしてみてはいかがでしょうか。

ノミやマダニの予防薬

チワワに限ったことではありませんが、ノミやマダニの予防もしっかりしてあげることが大切です。ほとんど室内にいるからといってうっかり予防を忘れて出掛け、ノミなどの寄生虫がついてしまうと、皮膚炎を起こし脱毛してしまうこともあります。

暖かくなってくる春ごろから寒くなる11~12月ごろまで、少しでも外に出るときには必ず予防をしてあげてくださいね。

ストレスの発散

ストレスも脱毛の大きな原因となります。ストレス自体で脱毛するストレス性脱毛症もありますが、ストレスを受けることによって肢端舐性皮膚炎による脱毛を起こす場合もあります。

チワワは神経質な性格をしているので、ストレスを受けやすい犬種でもあるのです。ストレスの原因となる運動不足解消のためにも、気分転換のためにも、散歩に連れて行ってあげることも大切です。

さらに飼い主さんへの依存度も比較的高い、甘えん坊なチワワ。飼い主さんとのコミュニケーションの時間も非常に大切です。留守番ばかりであまり構ってあげていないと寂しくてストレスを感じることがあるでしょう。

また、近所の騒音や雷の音などでもストレスを感じることがあります。なるべく自宅の中で愛犬が安心できる場所を作ってあげ、落ち着ける環境づくりなども心掛けてあげてくださいね。

サプリメントを取り入れる

必要な栄養素を補うためにはサプリメントもおすすめです。皮膚・被毛に良いDHAやEPAを含んだサプリメントは、関節のケアにも役立つものがあります。

チワワのような小型犬は、高齢になるにつれ関節トラブルが起きやすいので、そのようなサプリメントを与えるのも良いでしょう。

また、内側から免疫力を高めるキングアガリクスなどのサプリメントもおすすめです。免疫力を高めることができれば皮膚・被毛のケアはもちろん、色々な病気から体を守ることができます。

高齢になると自然と食欲が落ちたり、免疫力が落ちたりしてしまいますので、食事だけでは不足している分をサプリメントで補うと良いでしょう。

サプリメントは薬ではないので長期的に投与をしても副作用などの心配がありません。品質のしっかりした安心安全なものを選んであげてくださいね。

執筆者:竹内CoCo先生

経歴:大阪コミュニケーションアート専門学校ペットビジネス科ペットトリマーコース(現在の大阪ECO動物海洋専門学校)卒業。

ペットショップ勤務を経て、現役動物看護士。動物病院で勤務している立場から、「正しい知識を持ってペットと幸せに暮らしてもらいたい」という気持ちで正確な情報をお届けします。