柴犬がかかりやすい5つの皮膚炎の症状、治療法、予防法について【動物看護士執筆】

柴犬がかかりやすい5つの皮膚炎

執筆者:ramoup先生

認定動物看護師・JKC認定トリマー

病気になりにくく長生きが多いといわれる柴犬。ですが、皮膚炎に関しては他犬種よりも発症リスクが高い傾向があります。そのため今回は柴犬がかかりやすい5つの皮膚炎について、症状、治療法、予防法をまとめました。

普段の様子や行動などからできるだけ早く皮膚トラブルに気付き、早期治療が行えるようにしましょう。

【1】アレルギー性皮膚炎

アレルギーによって皮膚に炎症が起こる病気全般を、アレルギー性皮膚炎といいます。アレルギーの原因には大きく分けて「食べ物」と「環境中に含まれるもの」の2つがあります。このうち、食べ物が原因で起こる皮膚炎は食物アレルギー性皮膚炎、環境中に含まれるものが原因の場合には、接触性皮膚炎やノミダニアレルギー、アトピー性皮膚炎など様々な分類に分かれているのです。

アレルギー性皮膚炎の主な症状としては、体の痒み・赤み、脱毛やフケなど。耳に炎症が起きることで外耳炎を併発する場合もあります。

【治療法】

血液検査を行い、原因となるアレルゲンは何か明確に特定します。その後、飲み薬や塗り薬を使って痒みや炎症を抑え、症状の悪化を防ぎます。(皮膚バリアが壊れて細菌感染を起こしている場合には、抗生剤の処方も)その他、保湿効果のある薬用シャンプーを使って薬浴をしたり、根本的な体質改善として減感作療法やインターフェロン注射による治療が行われることもあります。

なお、食物アレルギー性皮膚炎の場合には、アレルギーを考慮したドッグフードに切り替えましょう。おやつのあげすぎは皮膚の状態を悪くしてしまうので、1日量をしっかりと守ることが大切です。

【予防法】

アレルギー性皮膚炎は体質的な病気なので、明確な予防法はありません。そのため、皮膚の状態や様子に何か変わったことがないか、毎日しっかりチェックすることで早期発見・早期治療を心がける必要があります。

また、バランスの良い食事、適度な運動、良質な睡眠などを通して、普段から体の免疫力を高めておくことも大切です。ノミダニなどの外部寄生虫が原因で皮膚炎を起こさないよう、散歩時にはできるだけ草むらなどを避けたコースを選んでくださいね。

【2】アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎はアレルギー性皮膚炎の一種で、遺伝性が高い病気といわれています。特に柴犬はアトピー性皮膚炎を起こしやすい犬種で、ほとんどは3歳までの間に発症します。主な症状は体の痒み、赤み、フケ、皮膚の乾燥、脱毛など。アレルギー性皮膚炎の中でもアトピーは特に痒みが強い病気なので、常に体を掻いたり、かじったり、時には床に口をこすりつけるような仕草がみられるでしょう。慢性的な炎症のせいで皮膚バリアが壊れてしまい、二次感染を起こして更に痒みが悪化することも多くあります。

なお、アトピー性皮膚炎は要因が複雑に絡み合って起こる病気ですから、一気に改善を目指すのではなく、しっかりと計画を立てて管理・治療を行うことが大切です。免疫が関係しているため完治は難しいですが、「痒みを最小限に抑える」ことを目標にし、適切な治療を長期的に受けるようにしましょう。

【治療法】

飲み薬や塗り薬を使って痒み・炎症を抑えます。アトピー性皮膚炎の犬は皮膚バリアが壊れてしまいやすいので、保湿クリームなどで皮膚を保護することも大切ですね。体の中から皮膚の健康を維持できるように、必須脂肪酸やアガリクスを含んだサプリの摂取もおすすめです。なお、根本的な体質改善を行うには、減感作療法やインターフェロン注射による治療が必要です。

また、草や花粉などがアレルゲンの場合には、散歩時に服を着せる、帰宅後にドライシートで体を拭くなどの対策が必要です。アトピー性皮膚炎はとても痒みが強い病気なのですが、掻いてしまうと余計に状態が悪化してしまうので要注意。留守番中にどうしても愛犬が体を掻きむしってしまう場合には、エリザベスカラーなどを使って物理的に皮膚を守ってあげる必要があるかもしれません。

【予防法】

アトピー性皮膚炎は遺伝性疾患なので、決定的な予防法はありません。ただ、ストレスや不適切な生活習慣が発症のきっかけとなる可能性を考え、できるだけ健康的な生活を心がけるようにしましょう。具体的には、栄養バランスの整った食事や良質な睡眠、適度な運動やスキンシップなどで体の抵抗力をあげておくこと。柴犬は精神的にデリケートな犬が多いので、コミュニケーションの取り方や普段の様子には特に注意してくださいね。

【3】マラセチア性皮膚炎

普段から皮膚に存在しているマラセチア菌が、何らかの理由で過剰に増えてしまうことで起こる皮膚炎です。主な症状としては、全身の赤みや痒み、ベタつきやフケなど。独特な甘い体臭を発するようになり、進行すると皮膚の黒ずみや脱毛などの症状がみられることもあります。マラセチア性皮膚炎はすべての犬で発症する可能性がある病気ですが、柴犬をはじめ、シーズーやフレンチブルドッグなど、遺伝的にかかりやすい犬種は特に注意しなければいけません。

【治療法】

増えてしまったマラセチア菌を薬用シャンプーで洗い流し、皮脂の過剰分泌を抑えます。場合によっては飲み薬や塗り薬を併用して、より効率的にマラセチア菌を減らすこともあります。マラセチア性皮膚炎は再発のリスクが高い病気なので、処方された薬は必ず用法・容量を守り、しっかりと治療を継続するようにしましょう。完全に治りきっていないのに治療を止めてしまうと、かえって皮膚の状態が悪くなってしまう可能性があります。

【予防法】

定期的なシャンプー、バランスの整った食事、良質な睡眠などを徹底し、皮膚バリアを正常に保ちます。シャンプー後はしっかりと乾かして、体に水分が残らないようにしましょう。

なお、マラセチア菌はカビの一種なので、梅雨時期など湿度の高い季節では増殖しやすいといわれています。そのため、雨の日が増える6月から気温が高い9月末くらいまでは特に注意して生活してくださいね。

【4】内分泌性皮膚炎

内分泌性皮膚炎とは、ホルモンの異常分泌が原因で起こる皮膚炎のことです。皮膚に影響のあるホルモンとしては、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、成長ホルモン、性ホルモンなど、様々な種類があり、いずれも何らかの理由でホルモンの分泌量が異常になることによって皮膚トラブルを起こします。

代表的な内分泌性疾患としては、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などがあげられ、どちらもフケや皮膚の黒ずみ、新陳代謝の滞りによる左右対称性の脱毛がみられます。また、脱毛部位の皮膚は血管が透けて見えるほど薄くなるので、見た目にもはっきりと皮膚の異常が分かる病気といえますね。また、顔周りがむくむことによって口元やまぶたが垂れ下がり、発症前とは顔が変わったように感じる人も多いでしょう。なお、痒みや痛みなどは皮膚病の症状として一般的ですが、内分泌性皮膚炎の場合ではほとんどありません。

【治療法】

投薬によって足りないホルモンを補ったり、過剰なホルモンの抑制を抑えます。また、腫瘍が原因でホルモンの異常分泌が起こっている場合には、腫瘍を切り取るために外科手術が行われることもあります。内分泌性皮膚炎は改善するまでに時間がかかる病気なので、治療は根気よく、継続して行うことが大切なポイントといえますね。なお、投薬治療では副作用が起こる可能性もあるので、何か変わったことがあればすぐに獣医師へ相談するようにしましょう。

【予防法】

ホルモンの異常分泌が起こってしまう原因には、ストレスや生まれつき、腫瘍などがありますが、はっきりと特定することはできません。そのため、予防法は特にないというのが現状です。柴犬はもともと皮膚炎を起こしやすい犬種なので、定期的な血液検査で甲状腺ホルモン濃度をはかるなど、早期発見・早期治療ができるように心がけましょう。

【5】心因性掻痒症

心因性掻痒症とは、ストレスやクセなどが原因で皮膚を掻いたり、舐めたりして炎症を起こしてしまう病気です。柴犬はデリケートな性格をしている場合が多く、些細なことでも過剰にストレスを感じてしまう傾向があります。そのため、始めは単純にストレスを紛らわす目的で体を掻いていたのに、それがクセになって皮膚炎を起こしてしまう、ということが起こりやすいのですね。

なお、心因性掻痒症には具体的な検査法がないため、診断が出るまでに時間がかかります。アトピー性皮膚炎の症状とよく似ていることもあって、現状では多くの心因性掻痒症が「原因不明のアレルギー性皮膚炎」として見落とされていることが多いのです。

【治療法】

抗生剤や保湿剤などを使って皮膚状態を改善させつつ、ストレスのない環境作りを意識して行います。もし患部に細菌感染がみられるようであれば、消毒薬や薬用シャンプーを使って病原菌を減らす必要があるでしょう。なお、薬用シャンプーには様々な種類がありますが、必ず獣医師に処方されたものを使うようにしてください。皮膚の違和感が強い場合には、かゆみ止めや精神安定剤などを使うことで落ち着いて生活できるようになります。

【予防法】

心因性掻痒症の発症率には、生まれつきの性格が大きく影響しています。ストレスを感じた時にとる行動は犬によって違うものですが、柴犬のようにデリケートな気質の犬種では、自分の体を繰り返し掻いたり、舐めたりすることが多い傾向が。そのため、少しでも愛犬のストレスを減らすためには、毎日よく様子を観察し、どんなことにストレスを感じているのか見極めることが大切です。特に留守番中は退屈して手足を舐め続けてしまうことが多いので、噛むと音が鳴ったり、中におやつを仕込めるコングなどを与えてあげるとよいでしょう。

執筆者:ramoup先生

経歴:ヤマザキ動物看護大学卒業。認定動物看護師・JKC認定トリマー。
動物病院勤務で培った知識・経験を活かし、「病気に関する情報を分かりやすく」お届けします。愛犬・愛猫の病気について、飼い主様がより理解を深める際のお手伝いができれば嬉しいです。