トイプードルがかかりやすい皮膚炎5つの症状、治療法、予防法について【動物看護師執筆】

トイプードルがかかりやすい皮膚炎

トイプードル

執筆者:ramoup先生

認定動物看護師・JKC認定トリマー

あまり知られていないのですが、実はトイプードルは皮脂の分泌が多い犬種です。

原産国であるヨーロッパは乾燥がひどいので、多くの皮脂で肌の健康を守らなくてはいけないのですね。

ただ、高温多湿の日本では、その皮脂分泌の多さがかえって皮膚に負担をかけてしまい、皮膚トラブルを起こすことも…。

今回は、トイプードルがかかりやすい5つの皮膚炎の症状や治療法、予防法について説明します。

【1】アトピー性皮膚炎

ほこりや花粉など、環境中に存在するアレルゲンに対して体の免疫が過剰に反応することで起こる病気です。アトピー性皮膚炎は遺伝性が強い病気で、トイプードルをはじめ、柴犬やシーズーなどの犬種で発症しやすいことが分かっており、他の犬や動物にうつることはありません。主な症状は、皮膚の痒み、赤み、フケ、脱毛など。ほとんどの場合は3歳までに症状が現れるといわれています。

【治療法】

アトピー性皮膚炎のように免疫が関係して起こる皮膚病は、完治が非常に難しいといわれています。アトピーの完治に効果的な治療法はまだ見つかっていないので、現時点では一生涯付き合っていく必要があるでしょう。痒みが繰り返されることで皮膚には常に湿疹が出てしまい、慢性化すると皮膚全体がぶ厚くなったり、脱毛部分が目立つようになります。そのため、アトピーの治療では何より痒みをコントロールすることが大切といえますね。

アトピー性皮膚炎の主な治療は、適切な投薬治療とスキンケアです。飲み薬や塗り薬を使って痒みと炎症を抑えつつ、保湿クリームなどで皮膚の乾燥を防いで正常な皮膚バリアに戻してあげましょう。また、肌の状態がかなりひどい場合には一時的にステロイド薬などを使って炎症を鎮めることもありますが、本格的な体質改善を行うには、減感作療法やインターフェロン注射による治療が必要です。

【予防法】

アトピーは遺伝性が強い病気なので、確実な予防法はありません。ですが、少しでも発症リスクを減らすためには、過度なストレスや不適切な生活習慣は避けるべき。トイプードルは皮膚分泌が多いぶん皮膚が蒸れてしまいやすいので、定期的なシャンプーやブラッシングで清潔を保つことが重要です。栄養バランスの整った良質な食事、充分な睡眠、適度な運動やスキンシップを通して、免疫力が正常に働くようにしておくことも大切なポイントですよ!なお、散歩時は服を着せる、1日1回は掃除機をかけるなど、普段からできるだけアレルゲンに接触する機会を少なくする工夫も行うようにしましょう。

【2】食物アレルギー性皮膚炎

特定の食べ物に対して免疫系が過剰に反応してしまい、皮膚にアレルギー症状がでる病気です。アレルゲンとなる食べ物には様々な種類がありますが、トイプードルの場合は特に牛肉や鶏肉、とうもろこしなどの穀類でアレルギー症状がでやすい傾向が。主な症状としては、体や口回りの痒み、赤み、発疹、脱毛などがあげられ、食後30分以内に現れることが多いでしょう。人間の食物アレルギーと違って重症化することはほとんどなく、ほとんどは数時間で症状が収まります。

【治療法】

普段の食事を食物アレルギー用の療法食に切り替えて、症状がでないようにします。もし皮膚に痒みがでている場合には、かゆみを止める飲み薬や塗り薬が処方されることもありますね。また、犬が舐めたり噛んだりして脱毛してしまった部分には、別途ステロイド剤を使って育毛を促したりする場合も。アレルゲンの特定をするために、除去食試験(アレルギーを起こしにくい食材で作られた療法食のみを一定期間与え続ける検査法)を行って症状の改善を目指すなど、食物アレルギーの治療方針は獣医師によって様々です。

【予防法】

食物アレルギーは、体質や遺伝、健康状態などによって起こります。そのため確実な予防方法はないのですが、あえて挙げるのであれば「同じものを食べ続けない」ことでしょうか。アレルギーというのは、原因物質の摂取量が体内で限界を超えた時に現れるものです。限界量はそれぞれの犬ごとに違いますが、同じものを続けて食べるとそのぶん許容値を超えやすくなるので、注意が必要でしょう。つまり、うさぎは様々な食材を使ったバランスの良いドッグフードを与えることで、食物アレルギーのリスクを減らすことができるかもしれないということですね。あまり頻繁にフードを変えるのもよくありませんが、アレルギー体質の犬ではフードを2~3種類ローテーションするのがおすすめです。なお、適度な運動や良質な睡眠を通して、普段から体の免疫力を高めておくことも大切ですよ。

【3】脂漏性皮膚炎

皮脂が過剰に分泌されてしまったり、逆に皮脂の分泌が極端に少なくなるなど、皮脂の分泌バランスが崩れることで起こる皮膚炎です。アトピー性皮膚炎と同じく遺伝性が強い病気で、慢性化しやすい皮膚病といえるでしょう。脂漏性皮膚炎には大きく分けて脂性脂漏症と乾性脂漏症の2つがありますが、トイプードルに多いのは脂性脂漏症のほうです。脂性脂漏症の主な症状は、皮膚のべたつき、痒み、フケ、脱毛など。皮膚の常在菌であるマラセチア菌の異常繁殖によって、外耳炎や膿皮症などの二次的な皮膚トラブルも起こしやすいといわれています。

【治療法】

増えてしまったマラセチア菌を薬用シャンプーで洗い流します。病状によって頻度は変わりますが、一般的には週1回程度がシャンプーの目安とされています。シャンプー後は水分をしっかりと拭き取り、保湿クリームなどで皮膚バリアを保護してあげましょう。また、薬用シャンプーと合わせて抗真菌作用のある飲み薬や塗り薬を使うことで、より効率的に治療を行うことができます。なお、痒みが強い場合には痒み止めの飲み薬を使うこともありますし、合併症を起こしていれば同時にその治療も行います。

【予防法】

脂漏性皮膚炎は再発しやすいので、定期的なシャンプーが必要不可欠です。薬用シャンプーには、治療中の短期間だけ使う殺菌作用の強いものと、日常的に使ってよいものとがあるので、必ず獣医師に相談したうえで購入してくださいね。また、普段の食事によって皮脂分泌が過剰になってしまうこともありますから、ドッグフードは栄養バランスの整ったものを与えるようにしましょう。オメガ脂肪酸やアガリクスなどのサプリメントを併用することで、皮膚の健康を維持する効果も期待できますよ。湿度が高い6月~9月頃はマラセチア菌が増殖しやすいので、この時期は特に注意しましょう。

【4】膿皮症

皮膚にできた傷口からブドウ球菌が入ってしまうこと等で起こる病気です。ブドウ球菌は犬の皮膚上にもいる菌ですが、ただ存在するだけでは特に問題はありません。ですが、傷口から直接体内に入ってしまったり、皮膚のバリア機能が下がっていたりすると、痒みや脱毛、発疹などの症状を引き起こすのです。なお、膿皮症の初期症状は一部分のみに現れるのが一般的。ですが、犬が患部を掻いたり舐めたりしているうちに病原菌は全身に広がってしまうので、徐々に症状が出る範囲も広がっていきます。

【治療法】

抗生剤を2~3週間ほど服用し、過剰に増えてしまったブドウ球菌を減らします。抗生剤には飲み薬と塗り薬がありますが、基本的には併用して治療することが多いでしょう。なお、服用の回数や期間については、必ず獣医師の指示を守ってください。見た目では良くなったから、と勝手に抗生剤の服用を止めてしまうと、薬剤耐性菌(抗生剤が効かない菌のこと)によって完治が遅れてしまうかもしれません。もともと膿皮症は完治までに時間がかかる皮膚病なので、治療はできる限り効率的に行う必要があります。その他の治療としては、抗菌作用のある薬用シャンプーを使って薬浴を行い、ブドウ球菌を減らしていきます。

【予防法】

膿皮症を予防するためには、普段から皮膚の免疫力を高めておくことが大切です。具体的な方法としては、栄養バランスの整った食事、快適な温度・湿度管理、定期的なシャンプーで余分な皮脂を落とす、生活環境を清潔に保つなどが挙げられますね。また、散歩中にできた小さな傷口からブドウ球菌が侵入することもあるので、砂利道や草の多い場所はできるだけ散歩コースから外すようにしましょう。こまめに皮膚の状態をチェックし、異変があればすぐに病院を受診することも大切なポイントですね。

【5】内分泌性皮膚炎

内分泌性皮膚炎は、ホルモンの異常な分泌が原因で起こる皮膚炎のことです。ホルモンの種類としては、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、成長ホルモン、性ホルモンなど。これらのホルモンが何らかの原因で異常分泌を起こしてしまうと、犬の皮膚には様々な症状が現れるようになります。ホルモン異常を引き起こす病気には、大きく分けて「甲状腺機能低下症(アジソン病)」と「副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)」の2つがありますが、フケや皮膚の黒ずみ、左右対称性の脱毛など、その症状はとてもよく似ています。なお、甲状腺機能亢進症はホルモンの分泌量が減ってしまうことで起こる病気、反対に副腎皮質機能亢進症はホルモンの過剰な分泌によって起こる病気なので、原因としては真逆の病気といえますね。内分泌性皮膚炎はとても治りにくく、症状が落ち着くまでの時間が長いという特徴があります。

【治療法】

長期にわたってホルモン剤を服用し、ホルモンの分泌量を正常に保ちます。甲状腺機能低下症と副審皮質機能亢進症は原因がまったく違う病気なので、必ず検査で確定診断を受ける必要がありますね。なお、ホルモンの異常分泌は腫瘍が原因で起こることもあります。その場合には、腫瘍を摘出する手術を行うことでホルモンの分泌量を元に戻す必要があるでしょう。内分泌性皮膚炎は症状が落ち着くまでに時間がかかる病気なので、治療は根気よく、継続して行うことが重要です。さいわい、ホルモン性の皮膚炎には痒みや痛みといった症状がでず、犬にとってそれほどツラい病気というわけではありません。すぐに良くならないからと自己判断で薬を止めたりせず、長期的な視点で考えるようにしてくださいね。

【予防法】

内分泌性皮膚炎ははっきりした原因がわかっていない病気なので、予防法も現時点ではありません。特定の犬種に多く発症することから遺伝性が強い病気とも考えられていますし、ストレスや腫瘍がきっかけとなって起こる可能性もあるでしょう。できるだけ早期発見・早期治療ができるように、定期的な血液検査でホルモン濃度をはかっておくことをおすすめします。

執筆者:ramoup先生

経歴:ヤマザキ動物看護大学卒業。認定動物看護師・JKC認定トリマー。
動物病院勤務で培った知識・経験を活かし、「病気に関する情報を分かりやすく」お届けします。愛犬・愛猫の病気について、飼い主様がより理解を深める際のお手伝いができれば嬉しいです。