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再発の多い犬の指間炎の原因と3つの予防策とは?
執筆者:後藤大介先生(獣医師)
犬の指間炎について
指間炎は、文字通り指の間に起こる炎症のことです。犬にはパッド(肉球)の間にある皮膚が炎症を起こし、赤みや痒みが起こる指間炎が非常に多く発生します。
犬の指間炎の特徴はその赤みと痒みになります。愛犬の肉球の間が赤く腫れていたり、しきりに犬が気にして手足の先を舐めていたりする場合には、指間炎がある可能性が高いです。指間炎がひどくなると、指間の皮膚が真っ赤にただれてしまい、その痛みから足を着けないようになってしまうこともあります。
指間炎は症状と見た目から、お家でも気づいてあげやすい病気です。命にかかわる病気ではないですが、痒みや痛みは愛犬に強いストレスを与え、生活の質(QOL)を大きく落としてしまいます。指間炎のしっかりした知識を付けて、予防や対策をできるようにしておきましょう。
犬の指間炎の原因
犬の指間炎の原因にはさまざまな病気があります。ただし、どのような原因にしても、犬が自分で舐めることで炎症が悪化し、赤みや痒みがひどくなっていくという経過をたどることが多いです。
指間炎の原因には以下のような病気や体質が関係します。
アトピー性皮膚炎・食物アレルギー
犬のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーでは、一般的に皮膚の痒みや赤みが出てきます。顔回りや内股、お腹に痒みが出ることが多いですが、指間もアトピー性皮膚炎や食物アレルギーによる痒みが出やすい部位になります。
指間以外にも、顔や内股、脇などにかゆみや赤みが出てくる場合、指間炎の原因にアトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどの体質が関与している可能性が高くなります。
接触性皮膚炎
皮膚の表面に付いたものに対してアレルギー反応を起こす病気が接触性皮膚炎です。犬は靴や靴下を履かないため、散歩中に土や草などが足に付き、接触性皮膚炎による指間炎が引き起こされることがあります。
特に散歩後によく足を舐めたり噛んだりする犬では、接触性皮膚炎の可能性が高いため要注意です。
ニキビダニ感染症
ニキビダニは、犬の皮膚に寄生する目に見えない小さなダニです。免疫力が不十分な犬の皮膚でニキビダニが増えると、赤みと皮膚のただれが強い指間炎を引き起こすことがあります。
ニキビダニは指間炎だけでなく、時に全身に広がって広範囲の皮膚炎を引き起こすこともあり、特に子犬や高齢犬では注意が必要です。
細菌および真菌感染症
指間炎は細菌感染や真菌感染によって起こることもあります。
犬は、ヒトのように全身に汗をかくことはありませんが、唯一肉球にだけ汗は汗をかきます。また、指間に毛が生える犬も多く、指間は蒸れやすく汚れやすい場所となります。
指間に汚れが付いたり蒸れたりすると、細菌や真菌が増えやすい環境になります。特にアレルギーやアトピーがあると分泌物が増えますし、痒みから舐めることで指間に唾液が付き、蒸れやすくなります。
細菌や真菌の感染の多くは二次感染(もともと皮膚が荒れやすい原因があり、細菌や真菌が増えてしまう)ですが、感染の結果症状が悪化してしまうことが多いです。
舐性皮膚炎
舐め続けることで起こる皮膚炎を舐性(しせい)皮膚炎と呼びます。犬はやることがなくて退屈したり、ストレスが溜まっているときに、同じ行動を取って心を落ち着かせようとする「常同行動」をとりますが、手足を舐めるのも常同行動の一つです。
自分で舐めることで皮膚が荒れるとともに、口の中の細菌が繁殖して指間炎を引き起こしやすくなります。大した原因がなくても舐め続ければ指間炎が起きてしまうこともあります。
指間炎になりやすい犬種
指間炎はどの犬種にも起こりますが、以下のような犬種では指間炎を引き起こす素因を持っているため、指間炎に要注意です。
・皮膚が弱い(アレルギーの多い)犬種:シーズー、ウェスティ、マルチーズ、フレンチブルドッグ、柴など
・足の裏に毛が生えやすい犬種:トイプードル、ミニチュアシュナウザーなど
・ストレスを感じやすい犬種:チワワ、パピヨンなど
指間炎の治療方法
指間炎の治療には外用治療と内服治療があります。
外用治療
外用療法は、指間を洗ったり薬を塗ったりするなどといった局所療法になります。
手足のシャンプー
細菌や真菌などの感染がある場合には、手足のシャンプーが非常に有効です。指間炎には、その状態によって抗菌シャンプーやアレルギー用の肌に優しいシャンプーなどを使うことが一般的です。散歩後に手足を洗い流し、しっかりすすいで乾かしてあげると効果的です。
外用薬(塗り薬)
犬用の外用薬には、抗菌薬、抗真菌薬、消炎剤などさまざまな種類があり、いくつかの種類が混じった合剤もあります。塗り薬は比較的簡単に使うことができ、薬の成分の全身への影響が少ないというメリットがありますが、舐めてしまうと効果が落ちたり逆に悪化することもあるので、犬の性格によっては難しいケースもあります。
塗り薬を使う場合には舐めさせないようにする必要であり、食餌や散歩の前に塗り薬を塗るなどの工夫が効果的です。それでも舐めてしまう犬には、エリザベスカラーなどを装着して舐められないようにすることもあります。
内服薬
指間炎の治療には、外用治療だけでなく内服治療を使うことも多くなります。外用治療と内服治療を併用するケースも少なくありません。
抗寄生虫薬
ニキビダニの治療には抗寄生虫薬を内服薬させることが多いです。ニキビダニの犬には、抗寄生虫薬を注射したり、塗ったりすることもあります。
抗菌薬/抗真菌薬/消炎剤
感染や炎症が強い場合には、抗菌薬、抗真菌薬、消炎剤などの内服薬を使うことがあります。特に痒みの強い指間炎には、ステロイドなどの消炎剤を使うと痒みを抑えることができます。
内服の抗菌薬や抗真菌薬、消炎剤には副作用もありますので、その用量や投薬期間は必ず動物病院で確認するようにしてください。
サプリメント
指間炎はアレルギーや免疫不全など免疫が関与することも多いため、免疫力を高めたり、免疫力を調整するようなサプリメントも有効だと考えられます。
特に、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーが疑われる指間炎、あるいは何度も繰り返す指間炎などには、サプリメントなどで内側から体質改善をしていくことも大切です。サプリメントは薬と違い、即効性はあまり期待できないものの、副作用の心配がほとんどありませんので、長期の投与に向いています。
指間炎のときに気をつけたいこと
愛犬が指間炎にかかってしまった場合には、以下のような点に注意しましょう。
シャンプーするとき
指間炎を起こした犬の指間はとってもデリケートになっています。手足のシャンプーするときにきつくこすったり、洗浄力の強すぎるシャンプーを使うと余計に指間が荒れてしまいます。
指間に使うシャンプーは、肉球や指間の状態に合わせたものを選ぶ必要があります。指間炎がある場合には、自己判断で市販のシャンプーを使わず、動物病院でどのシャンプーを使ったらいいのか相談しておくといいでしょう。
お風呂に入れるとき
指間炎がある時は、肉球が敏感になっているので熱いお湯や冷たい水ではなく、体温に近いぬるま湯(38℃程度)を使うようにしてください。
また、指間にはシャンプーが残りやすく、そのせいでかゆみや赤みが出てしまうことがあります。ゆすぎは時間をかけてしっかり行いましょう。
それから、指間が濡れたままでおいておくと、指間が蒸れて細菌や真菌が繁殖しやすくなります。できるだけしっかり乾かしておくことが大切です。ただし、高温の温風を使うと、炎症や痒みがひどくなることがありますので、できるだけぬるめの温風で乾かすようにしてください。
肉球のお手入れ
肉球が乾燥してカサカサしている犬の場合、肉球の保湿ケアが必要になることがあります。
食餌
食物アレルギーが指間炎の原因となっている場合、食餌を変える必要があります。また、おやつがアレルギーの原因となることも多いので、色々な種類のおやつを与えるのはやめておきましょう。
指間炎を予防しよう!日ごろのケアの3つのポイント
1.指間や肉球を清潔に保つ
先ほど書いた通り、肉球の間にある指間は細菌や真菌が繁殖しやすい場所です。接触性皮膚炎などもありますので、できるだけ普段から指間や肉球を清潔に保っておくことが、指間炎を予防するポイントです。
散歩から帰ってきたら手足を拭いたり洗い流したりして、肉球のケアをしてあげましょう。
2.乾燥しやすい犬にはしっかり保湿を
肉球を触るとガサガサ硬くなっているという場合には、乾燥しすぎている可能性があります。肉球の乾燥は手足の痒みの原因となり、舐めることで指間炎を引き起こしやすくなります。
愛犬のパッドが乾燥しやすい場合には、犬用の保湿ローションや保湿スプレーなどを使い、乾燥しないようにしてあげてください。
3.ストレスを発散させる
原因は何であれ、犬は手足が気になり始めるとひたすら舐めて指間炎が悪化してしまいます。犬はストレスを感じると、手足をしきりに舐めることがあるため、ストレスを発散させてあげることで舐めて指間炎が悪化するのを防ぐことができます。退屈で何もすることがない時も、手足が気になってひたすら舐めてしまうことがあります。
できるだけ散歩や遊びの時間を増やしてあげるとともに、留守の時間でも退屈しないようコングなどの知育玩具をうまく使ってあげるようにしましょう。
犬の指間炎のまとめ
指間炎は犬にとても多く発生する病気です。指間炎には寄生虫などの病気、アトピーやアレルギーなどの体質、手足の汚れや蒸れなどの指間の環境、ストレスなどの精神的な面などさまざまな要因が組み合わさり、悪化してくることが多いです。
1度発症すると再発しやすいため、指間炎は予防も大切になります。指間炎は一生付き合っていかなければならないことも多く、サプリメントなどによる体質改善も指間炎の予防には有効になります。愛犬が指間炎を発症してしまったら、いろいろな方面から対策を立ててみてくださいね!
執筆者:後藤大介先生
アイビークリニック院長
獣医師
岐阜大学農学部卒業
大阪・北海道の動物病院で約10年間勤務した後、2018年、岐阜でアイビーペットクリニックを開業。