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ダックスフンドの指間炎とは
執筆者:ナルセノゾミ先生
動物看護士、愛玩動物飼養管理士
根強い人気犬種であるミニチュアダックスフンド。
ダックスフンドの皮膚トラブルの中には、肉球の隙間に炎症がおこる「指間炎」がよくみられます。
ダックスフンドが指間炎になりやすい理由と、指間炎予防のポイントをご紹介します。
指間炎の概要
指間炎は、肉球の間の皮膚が赤くただれ、炎症がおきている状態のことをいいます。
主に以下の症状がみられます。
・痒み
・痛み
・赤み
・ヒリつき
・膿み
・出血
犬の肉球には汗腺があり、湿気がこもりやすくなるため、細菌が繁殖しやすい環境です。
多少の汚れや細菌がついたからと言って指間炎になるわけではありませんが、体の免疫力が低下していたり、傷口からばい菌が侵入した場合などは指間炎をひきおこすことがあります。
指間炎そのものは珍しい症状ではありませんが、放っておくと症状が悪化するだけでなく、指間炎の影に隠れている病気の発見が遅れることにもなりかねません。
「単なる炎症」で片付けず、動物病院での治療とご自宅でのケアが大切です。
ダックスフンドが指間炎になりやすい理由
指間炎はどの犬種でも起こりうる皮膚症状の1つですが、ダックスフンドは指間炎になってしまうことが多い犬種でもあります。
その理由として、
①肉球の間に毛が生えている
②皮膚トラブルを抱えやすい
この2つが考えられます。
それぞれについて詳しく解説していきますね。
①肉球の間に毛が生えている
ダックスフンドはロングコートとスムースコートの2種類のコートがありますが、ロングコートのダックスフンドは、肉球の周りの毛もしっかり生えています。
トリミング後は肉球まわりの毛も短くカットしてもらえますが、放っておくと肉球が見えなくなるくらいまで毛で覆われてしまいます。
清潔にしているつもりでも、汗腺のある肉球が毛で隠れてしまうと、本来の肉球の役割(汗の放出、滑り止めなど)が果たされないだけでなく、雑菌の温床になりやすく、指間炎をひきおこしやすい環境になるのです。
②皮膚トラブルを抱えやすい
ダックスフンドは外耳炎や皮膚炎など、皮膚のトラブルを抱えるワンちゃんが多い傾向があります。
指間炎は皮膚病の中でよく見られる症状のため、皮膚が弱いとそれだけ指間炎が引き起こされる可能性が高くなるのです。
アレルギー症状としても指間炎がみられることがあります。
アレルギーの場合は体質によるものなので、完治が難しく、指間炎を繰り返すことも考えられます。
皮膚トラブルがおきやすい犬種では、指間炎をはじめとした皮膚症状に気をつけてあげましょう。
こんな様子がみられたら動物病院へ
指間炎がおきていても、足の裏の肉球の間の状態はあまりよく見えませんよね。
しかし、犬自身にも不快感があるため、行動に異変が見られるようになります。
指間炎は癖になりやすく、完治するまで時間がかかる場合がよくあります。
そのため、早期発見がとても大切。
愛犬にこんな様子が見られたら、早めに動物病院で診てもらいましょう。
足の裏を気にして舐めている
指間炎の症状として、多く見られるのが「痛み」「痒み」。
自分の歯の届く範囲であれば痛みを取り除こうと舐めたり噛んだりするため、しきりに足の裏を気にするようになります。
しかし、特段異常がなくても足の裏を舐める行動をとることがありますから、すべてが指間炎というわけではありません。
足の裏を気にする仕草がみられたら、まず肉球の隙間が赤くなっていないかなどチェックしましょう。
一日に何度も足の裏を気にする様子があれば、指間炎になっている可能性が高いです。
肉球に異常がある
指間炎になると、肉球やその隙間にぽっこりとしたできものが出来ることがあります。
肉球は普段あまり触ることはないかもしれませんが、1日1回は健康チェックも兼ねて愛犬の全身をくまなく触り、異変に気づけるようにしておくことが大切です。
もちろん、できものは指間炎だけでなく腫瘍なども可能性もあるため、気づいたらすぐに動物病院に相談してくださいね。
歩き方が不自然
指間炎がひどくなると、歩くたびに肉球周りに痛みが走るようになります。
犬は歩き回ることが大好きな動物ですから、歩きたがらなくなったり、特定の足を地面に付けないように歩くなど、歩き方が不自然になったら要注意。
皮膚全体ではなく、指間炎のみが悪化する場合は、怪我やばい菌の侵入が関係していることがあります。
重症化する前に動物病院で診てもらうことが大切です。
指間炎のさまざまな原因と治療法
指間炎は皮膚症状の1つであり、指間炎が引き起こされる原因にはいろいろな理由が考えられます。
多く見られるのは、病気による全身症状で免疫が低下し、細菌などが体内へ侵入することが原因になるケース。
アレルギー体質の場合も、同じように皮膚のバリア機能が低下しているために指間炎など皮膚の炎症が起こります。
接触性アレルギーは、特定のアレルゲン物質に触れることで、触れた部分に炎症が起こる特徴があるため、基礎疾患が見つからないのに指間炎だけが悪化するといった場合は、生活環境内にアレルゲンがないか疑ってみる必要があります。
次いで、棘が刺さった、高温のアスファルトでのお散歩などでのやけどによる指間炎があります。
また、ストレスなどで足の裏を舐め続けることで肉球周りがただれて指間炎なるというパターンもあります。
いずれにしても、健康体であれば、多少の細菌や汚れにさらされても指間炎になることはあまりありません。
多くの場合は、何らかの病気による全身症状の結果として免疫力が下がり、指間炎が引き起こされています。
原因にや症状の重さにより指間炎の治療方法は異なります。
痒み、痛みをおさえる飲み薬や抗生物質の注射で対症療法が一般的です。
また、免疫低下の原因となる基礎疾患の治療も同時に行います。
指間炎が悪化しないようにエリザベスカラーを付けたり、患部を保護する包帯を巻いたりすることもあります。
指間炎中のケアと再発予防の3つのポイント
基礎疾患の完治が難しい場合など、免疫力が継続的に低下している状態になると、指間炎を繰り返すことが多いです。
一時的に良くなっても、油断するとまた症状が出てしまう・・・繰り返すと肉球の隙間の皮膚が厚くゴワつく原因になったり、ワンちゃんも繰り返す指間炎の症状にストレスを感じてしまいます。
そのため、指間炎の予防対策やケアを心がけましょう。
完治が難しい場合であっても、症状を最小限にすることを目指しましょう。
足の裏を清潔にする
愛犬の足の裏は常に清潔にすることが大切です。
お散歩から帰ったあとはぬるま湯で濡らし、固く絞ったタオルで、肉球・肉球のスキマを丁寧に拭きましょう。
このとき、こするのではなく、トントンと抑えるように汚れを落とします。
清潔を心がけるあまり、お散歩後などは毎回シャンプーで足裏を洗う、という飼い主さんもいらっしゃいますが、ドライヤーできちんと乾かさないと、かえって雑菌が繁殖してしまいます。
何度もシャンプーを使うことで、皮膚が乾燥してしまったり、逆効果の場合もありますので、タオルで拭くケアを徹底することがおすすめです。
指間炎になっている場合は、少しの刺激でも痛みに繋がり、そこを気にして舐め指間炎が悪化するという悪循環に陥りやすいため、優しく丁寧にケアをしてあげたいですね。
また、足の裏を清潔に保つためにも、肉球周りの毛も定期的に短くカットする必要があります。
トリミングサロンや動物病院では部分カットをしてくれるところも多いため、1ヶ月に1回くらいのペースで肉球周りだけでもカットしてもらうようにしましょう。
皮膚に優しいスキンケアを
指間炎になっている場合は、皮膚はとても敏感になっています。
肉球を舐めすぎてガサガサになっていたり、皮膚が固くなって違和感が出ることも。
皮膚の炎症は、皮膚の水分量も低下している場合が多いため、状態に合わせて保湿も大切なケアになります。
刺激の少ない肉球クリームや、炎症を抑えるハーブで温湿布をするなど、即効性はありませんが、長く続けることで少しずつ皮膚の状態が良くなってきます。
かかりつけの獣医師に相談しながら、皮膚のスキンケアも生活に取り入れてみることをおすすめします。
免疫力を高める工夫を
指間炎は、多くの場合は基礎疾患が原因となり発症します。
病気によっては完治が難しく、指間炎とも長い付き合いになることもあります。
アレルギー体質も同様で、一生付き合っていくことを前提として考える必要がありますよね。
そうした場合は、指間炎をはじめとする皮膚症状に対して、ワンちゃん自身が持つ免疫機能を高めることが重要になります。
ストレスを溜めないための適度な運動、ドッグフードの見直しなどバランスの良い食事を与える、免疫細胞を活性化させる栄養素が含まれたサプリメントを取り入れるなど、出来ることから初めてみましょう。
体は食べたものから作られるため、毎日の食事は健康にダイレクトに影響します。
また、免疫細胞は、腸内に多く存在しています。
免疫が落ちているときは、下痢をしやすくなったり、ウンチの臭いがきつくなったりすることがあるため、腸内環境を整えるためにも、食事やサプリメントで栄養バランスを調整してあげると良いですね。
指間炎は免疫低下を知らせるバロメーター
ダックスフンドの指間炎は、珍しくありません。
足の裏に毛が生えていること、犬種の持つ傾向として皮膚トラブルを抱えやすいことから、指間炎になりやすい犬種と言えるかもしれませんね。
指間炎の原因となっている基礎疾患の治療が、結果的に指間炎の改善に繋がるポイントではありますが、日常のケアを少し丁寧にしてあげるだけでも、指間炎の治りは早まることと思います。
指間炎を繰り返すときは、免疫が落ちていることを知らせるサイン。
食事や運動などの生活習慣を見直すキッカケと捉え、愛犬と二人三脚で治療していきましょう。
執筆者:ナルセノゾミ先生
動物看護士、愛玩動物飼養管理士
仙台総合ペット専門学校で、動物看護・アニマルセラピーについて学ぶ。
在学中は動物病院・ペットショップの他、動物園での実習も経験。
犬猫、小動物はもちろん、野生動物や昆虫まで、生粋の生き物オタク。
関わる動物たちを幸せにしたい、をモットーに活動しているWebライター。