柴犬に指間炎が多い理由と、早期発見の3つのチェックポイント【動物看護士執筆】

柴犬に指間炎が多い理由と、早期発見の3つのチェックポイント

執筆者:ナルセノゾミ先生

動物看護士、愛玩動物飼養管理士

指間炎と柴犬の特性

犬の指間炎は、肉球の間が赤く炎症をおこすことをいいます。

犬が肉球を舐める仕草をするのは珍しくありませんが、指間炎は痒み・痛みが生じるため、一心不乱に肉球を舐め続ける様子があれば要注意。
指間炎になっているサインかもしれません。

指間炎はどの犬種でも起こりうる皮膚症状ですが、皮膚が弱い、または抵抗力が落ちて皮膚が弱くなったときに発症することが多いです。

その点で言うと、犬種の持つ特質として、アレルギーやアトピーになりやすい柴犬は、指間炎になりやすい傾向があると言えるでしょう。

指間炎の原因は大きく3つ

わたしたち人間も、肌が炎症を起こすことがありますよね。
犬の指間炎も同じで、指間炎そのものは病気の概念ではなく、さまざまな原因によって現れる皮膚症状の名称です。

指間炎の原因によって対処や治療方法は異なるため、まずは原因の特定をすることが大切です。

傷・火傷によるばい菌の侵入

犬の肉球はプニプニと弾力があり柔らかいですよね。
衝撃を受け止めるクッションの役割をしているだけでなく、肉球には汗腺があるため湿り気があります。

お散歩中に小さな棘が刺さったり、浅く細かい切り傷がついたり、気温が高い日のアスファルトを歩くことで肉球を火傷したりと、意外と過酷な環境に耐えているのが肉球です。

物理的にばい菌や汚れが付きやすい場所のため、小さな傷口からばい菌が入ることで炎症を起こすことは、非常によくあります。

犬は本能的に、唾液に含まれる成分で怪我や出血を止めようとします。
大概の場合、軽い炎症は自然と治っていきますが、炎症が悪化する場合や自然治癒が難しいほど炎症が広がってしまうと、指間炎になってしまうのです。

さらに、指間炎になると肉球を舐めることはかえって逆効果。
患部が刺激され炎症が悪化するだけでなく、ばい菌がどんどん繁殖するため、早めに適切な治療を受けましょう。

基礎疾患による免疫力の低下

なんらかの疾患を抱えている場合、体全体の免疫機能は低下するため、指間炎になりやすくなります。

この場合、内臓疾患や消化器系疾患など、指間炎を引き起こしている基礎疾患の治療を行う必要があります。

アレルギー・アトピー体質でも免疫力は低下します。
特に、柴犬はアレルギー・アトピー体質が多い傾向があるため、悪化する前に早めに対処してあげたいですね。

基礎疾患やアレルギーが原因の場合は、指間炎も完治まで時間がかかることが多く、指間炎が慢性化し治りにくくなるため、まずは基礎疾患の治療を考える必要があります。

ストレスによる常同行動で指間炎に

犬はストレスが溜まると、同じ行動を繰り返して行う「常同行動」にはしり、しばしばその矛先が足元に向くことがあります。

ストレスや不安から逃れるために肉球を舐め続ける行動をとり、指間炎を引き起こしてしまうのです。

退屈な時間が長い、環境の変化による不安など、ストレスの原因はさまざま。

柴犬は飼い主や家族に対する忠誠心が強く、番犬向きの犬種です。
その分、デリケートな性質を持っているのです。

引っ越し、部屋の移動、家族が増えたなどの生活環境の変化にも敏感な面があるため、些細なことが大きなストレスになっている可能性があります。

肉球を舐める行動そのものが癖になってしまうと、指間炎が治ってもまた肉球を舐め、指間炎を慢性化させてしまうこともあるのです。

「指間炎かな?」飼い主さんが気づきやすい3つのポイント

指間炎になると、犬が肉球を舐める行動で「あれ?」と飼い主さんが気づくことが多いです。

しかし、その他にも指間炎のサインがあります。

中には、肉球を舐めていて飼い主さんに叱られたことで、見えないところで肉球を舐めるようになり、指間炎の発症に気づくのが遅くなったというケースもあります。

常に地についている肉球、また全身を被毛で覆われている犬の皮膚状態を日々観察するのは難しいかもしれませんが、次の状態が見られたら、指間炎になっている可能性があります。

足先の被毛が変色している

肉球周りを舐め続けると、被毛が細くなり、色も薄く変色してきます。
元の毛色にもよりますが、足先や肉球周りの毛色や毛質が周りの状態と違うと感じる場合、念のため肉球やその隙間をチェックしましょう。

肉球の周りにフケ・かさぶたがある

指間炎が広がると、犬が患部を噛んで出血することがあります。

その場合、肉球の周りにかさぶたができたり、肉球周りを舐め続けることによって皮膚が乾燥し、フケが生じることも。

肉球や指間は見落としがちな部分ですが、通常であればフケが出ることはありませんので、なにか異常が見られたら早めにかかりつけの動物病院に相談するようにしましょう。

肉球周りを触られることを嫌がる

指間炎は痒みだけでなく、できものが出来たり大きく腫れることもあります。

肉球を触られることを嫌がったり、歩くときに肉球をかばう様子がみられるときも、指間炎になっている可能性があります。

もちろん、指間炎だけでなく怪我なども考えられますが、肉球の状態をチェックし、早めに動物病院に連れていきましょう。

指間炎を悪化させないためのポイント

指間炎と診断されたら、治療と同時に、これ以上悪化させないことが大切です。

指間炎自体は生死に関わる症状ではありませんから、緊急性が低いと思われたり、自然治癒を望む飼い主さんもいらっしゃいます。

もちろん、自然に治ることもありますが、多くの場合は放っておけば悪化の道をたどることになってしまいます。

慢性化すると治りにくいだけでなく、肉球やその周りに痛みや変形などの後遺症が残ることもあります。

指間炎を悪化させないために、治療と並行して行って欲しい、ご自宅での対処をご紹介します。

エリザベスカラーの装着

痒みを抑える薬を飲んでも、口の届くところに違和感のある部位があれば、犬はまた患部を舐めてしまいますよね。

そのため、どうしても舐めてしまうワンちゃんには、痒みや炎症が引くまでの数日間はエリザベスカラーを装着すると良いでしょう。

舐める頻度が減るだけでも患部の腫れは引きやすくなるため、少しの間だけ我慢してもらうことも大切です。

運動やスキンシップでのストレス解消

ストレスや退屈な時間が多いことが影響している指間炎の場合、お散歩の時間を長めにとったり、たっぷりスキンシップをとって愛犬との時間を作ったり、なるべくストレスを溜めないようにしましょう。

犬はとても賢い動物ですので、飼い主さんのわずかな心の動きも敏感に察知することも珍しくありません。

愛犬に伝わっていなかった愛情をたっぷり注ぐことで、繰り返していた指間炎があっという間に治った!というケースもありました。

犬の性格は多種多様ですが、愛犬の性格に合わせて、メンタル面からもケアすることもとても大切です。

サプリメントの併用で抵抗力をアップ

指間炎を繰り返す場合、基礎疾患やアレルギーなどにより免疫機能が低下していることが多くみられます。

基礎疾患の治療はもちろんですが、並行して体の抵抗力をアップさせていく必要もあります。

その際、重要なのが食事の栄養バランス。
そしてドッグフードや療養食だけでは足りない栄養素を、サプリメントで補う方法も合わせて考えてみましょう。

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薬による対症療法だけでなく、体の内側からもアプローチすると、より早く改善に向かうこともありますよ。

指間炎になっているときのNG行動

指間炎になっているときは、なるべく肉球周りへの刺激を避けなければなりません。

歩くだけでも肉球周りは刺激にさらされているため、なるべくその刺激を少なくしてあげるようにしましょう。

熱くなったアスファルトの上を歩く

指間炎でなくても真夏は特に注意が必要ですが、気温が上がるとアスファルト表面の温度が高くなります。

犬は常に裸足で歩いているようなものですから、火傷は指間炎が悪化する原因にもなります。

すでに指間炎を引き起こしている場合は治りも遅くなるため、指間炎中のお散歩は、なるべく太陽が出ていない時間帯に行くようにしましょう。

過剰な洗浄

肉球周りを清潔にすることは大切ですが、過剰な洗浄は逆効果です。

外から帰ったあとは、固く絞ったタオルでやさしく汚れをふき取るくらいで充分です。

毎回シャンプー剤で足元を洗うといった過剰な洗浄は、指間炎を悪化させる原因にもなってしまいます。

「ばい菌が入ってはいけない!」と心配になってしまう飼い主さんも多いかと思いますが、しっかり汚れをふき取っていれば、あまり神経質になる必要はないですよ。

市販薬の使用

指間炎で肉球の間が赤くなっているとき、安易に市販の軟膏を使用することはおすすめしません。

犬はベタベタするものを付けられると舐めとろうとしますし、口に入ると嘔吐などを引き起こす可能性があります。

もちろん、怪我など一時的な応急処置として市販薬を使用できるケースもありますが、指間炎の場合は動物病院で塗り薬を処方されることも少ないため、まずは獣医師に相談するようにしましょう。

指間炎は早期発見・早期治療・早期対策がカギ

指間炎は、完治まで1ヶ月ほど時間がかかることが多く、治療が長引くことも珍しくありません。

それは、単に外部からの刺激で炎症が起きているといった理由ではなく、他の病気やアレルギーなどの体質が原因となっていることが多いからと言い換えることもできます。

慢性化すると完治が難しくなるため、早期発見のためにも日常的に愛犬の全身をくまなく触り、行動もよく観察しておくと安心です。

執筆者:ナルセノゾミ先生
動物看護士、愛玩動物飼養管理士

仙台総合ペット専門学校で、動物看護・アニマルセラピーについて学ぶ。
在学中は動物病院・ペットショップの他、動物園での実習も経験。
犬猫、小動物はもちろん、野生動物や昆虫まで、生粋の生き物オタク。
関わる動物たちを幸せにしたい、をモットーに活動しているWebライター。