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ダックスフントの指間炎について
執筆者:ramoup先生
認定動物看護師・JKC認定トリマー
胴長・短足がチャームポイントのダックスフントは、常に人気犬種ランキング上位!明るい性格で運動好きなことから、小型犬のわりには多くの運動量が必要な犬種といえるでしょう。
足が短いため上下運動は得意ではありませんが、平地であれば驚くほどパワフルに走りまわることができ、とってこい遊びや追いかけっこは大の得意です。
そんな明るくて活発な一面を持つダックスフントですが、突然お散歩に行きたがらなくなることがあります。
愛犬の元気がなくなる原因は、夏バテや体調不良、ストレスや肥満など色々と考えられますが、そのうち多い理由に「指間炎」という病気があります。
指間炎とは、その名の通り指と指の間に炎症が起こってしまう病気のこと。炎症が起こっている部分には違和感や痒み・痛みが出るので、犬は常に足先を気にするようになります。
もし愛犬が暇さえあれば足先をペロペロと舐めていたり、歩くのを嫌がるようになったりしたら、それは指間炎が原因かもしれません。
指間炎になると指の間は赤くなり、時にはぷっくりと腫れたようになることがあります。また、犬が気にして舐め続けることで唾液の成分が毛に移り、足先の毛が赤茶色に変色する可能性も。
ひどい場合には舐めた部分に炎症性のしこりができてしまい、外科手術で取り除かなければいけなくなることもあるなど、指間炎が犬に与える影響は多岐にわたります。
指間炎は命に関わる重大な病気ではありませんが、愛犬の生活レベルを下げる病気であることに間違いはありません。少しでもおかしいなと思ったら、できるだけ早く動物病院で診察してもらうようにしましょう。
ダックスフントの指間炎の原因
指間炎の原因は様々ですが、大きくは3つに分類できます。
【怪我や刺激などの外的要因】
基本的に犬は素足で地面を歩くので、どうしても足先のトラブルが多くなります。例えば、尖ったものを踏んで足裏に傷ができてしまったり、指の間に小さな小石が挟まってしまったり、時には草でかぶれてしまったりすることも考えられますよね。草むらにはノミやダニなど犬の皮膚に寄生する外部寄生虫も潜んでいますし、こうした異物が刺激となって炎症を起こしてしまうことは十分考えられます。
【ストレスや気を引きたいなど心理的要因】
犬は退屈やストレスを感じると、きまってペロペロと前足を舐める行動をみせます。これは人間でいう指しゃぶり、あるいは貧乏ゆすりのようなもので、なんとか自分の気持ちを落ち着かせようとしている時にみられる行動のひとつ。頻繁な足舐めは指間の蒸れに繋がり、湿気による細菌増殖が起こる原因になります。
【体質や免疫力の低下によるもの】
アレルギーが原因で手足に皮膚炎が起こり、それがもとで指間炎を起こすこともあります。特に柴犬、プードルなどはアレルギー体質の犬が多く、アトピーなど全身に炎症反応を起こしやすい傾向が。柴犬に比べるとダックスフントのアトピーは重症化しにくいですが、特定のものに触れた際にかぶれが出る「接触性皮膚炎」がみられることが多々あります。
ダックスフントの指間炎の治療方法
【指間炎の治療法】
・かゆみ止めや抗生剤などの服用・塗布
・指間の蒸れを抑えるための毛刈り
・薬用シャンプーによる雑菌のコントロール
・元の要因であるアレルギー疾患の治療
一般的に指間炎では、かゆみ止めや抗生剤を使った治療を行います。まずは飲み薬や塗り薬で炎症を抑えて、指間の違和感・痒みを取りのぞくのです。その他、原因が怪我や異物によるものであれば患部の洗浄・消毒を行ったり、アレルギーが原因であればアレルギーの治療を並行して行うなど、指間炎が起きてしまった原因に合わせた治療法を行う必要があります。症状がひどい場合にはステロイド薬で炎症を抑えることもありますね。
また、薬用シャンプーなどを使って定期的に足先を洗い、雑菌を除去するといった治療も並行して行われることが多い方法です。なお、使用する薬用シャンプーは獣医師が症状や原因に合わせて選ぶ必要があるので、自己判断で使わないようにしましょう。薬用シャンプーの効果を十分に発揮できるよう、動物病院によっては指間の毛をバリカンで短く刈ってから治療を開始するところもあります。
ちなみに、指間炎の診断は皮膚掻爬検査や針生検、血液検査によるアレルギー検査などで行います。明らかに足先の舐めが原因である場合は指間炎の可能性が高いですが、なかには腫瘍や骨の異常によって炎症が起きている場合も考えられるからです。
犬の指間炎は1度発症すると完治まで1~2ヵ月ほどかかることもある病気なので、くれぐれも慢性化させないよう注意しましょう。
ダックスフントが指間炎になった時に気を付けたいこと
愛犬が指間炎になってしまった場合、なにより大切なのは「患部を清潔に保つこと」です。指間炎は違和感や痒みを強く感じる病気なので、犬は1日中足先を気にして過ごすようになりますが、これでは治療の効果が十分に発揮できません。
「舐めちゃだめだよ!」と声をかければ一旦は止めるかもしれませんが、目を離せばまたすぐに足先を気にしだすようになるでしょう。特に指間炎の治療薬である軟膏はベタベタしたものがほとんどなので、なかには薬自体を気にして舐めとってしまう犬もいます。
こうした問題を避けるためには、犬の首に巻く保護具「エリザベスカラー」が有効です。エリザベスカラーを装着することによって犬は物理的に自分の手足を舐めることができなくなるので、患部の衛生をきちんと保つことができるでしょう。エリザベスカラーが苦手なわんちゃんは多いですが、指間炎をできるだけ早く治すためにも上手に活用してくださいね。
可哀想だからといって愛犬の自由にさせてしまうと、かえって指間炎が長引いてしまったり、症状が悪化する可能性があります。指間炎は適切な治療で完治させることができる皮膚炎ですから、とにかく舐めさせないように注意しましょう。
また、指間炎の治療中はアスファルトの多いお散歩コースを選ぶようにしてください。なぜなら草むらなど緑の多いところはトゲや石で怪我をするリスクが高いですし、なにより指間や足の裏に汚れがつきやすい場所だからです。軟膏を塗った状態で散歩をすると、ただでさえ普段よりも汚れがつきやすくなるので、緑の多い場所は避けて歩くようにしましょう。
お散歩の後は必ず足先をチェックし、犬用のウェットシートで汚れを拭き取ってあげてくださいね。泥汚れなどがひどい場合はシャワーで洗い流しても良いですが、その後はしっかりと乾かすことが大切です。ドライヤーの当てすぎはかえって皮膚バリアを壊してしまうので、事前に吸水性の高いタオルで水分を吸い取ってから行うようにしましょう。
指間炎にならないために、予防や日頃のケアのポイント
指間炎はどんな犬にも起こりうる皮膚炎であり、普段からの予防がとても重要です。ダックスフントはもともと指間炎を起こしやすい犬種なので、特に注意して生活するようにしましょう。ここでは、指間炎の発症リスクを下げるために必要な4つのポイントについてご紹介します。
(1)足の裏は常に清潔を保つこと
お散歩の後は必ず足先をチェックして、傷や汚れ・異物などがないか確認しましょう。犬の指間はしっとりと湿っており、湿度が大好きな細菌にとって絶好の繁殖場所です。特にアレルギー体質の愛犬では指間が蒸れやすいので、皮膚の状態はこまめに確認してあげてくださいね。もし足先を触ると怒るような場合には、吸水性の高いタオルの上を歩かせるだけでも水分を吸い取ることができますよ。
(2)肥満防止のため、食事管理はしっかり
ダックスフントは肥満になりやすく、関節のトラブルが多い犬種です。手足の関節には体重が重ければ重いほど負荷がかかるので、そのぶん炎症が起こりやすい傾向が。もとは違和感や痛みを気にして関節を舐めているうちに指間炎を併発してしまうことも多いので、体重管理には特に注意しましょう。
また、爪が伸びすぎていても歩く時に違和感や不安定さが出るので、犬が足先を気にして舐める原因になります。特にダックスフントは胴長・短足で関節への負担がかかりやすい犬種ですから、普段から爪は短くカットしておくようにしましょう。
(3)適度な運動とスキンシップを行う
指間炎はストレスによっても発症する病気なので、定期的なストレス発散が大切。寂しさや退屈が原因の舐めグセをなくすためには、運動やスキンシップを積極的に行う必要があります。週に1度はドッグランなどへ出かけたり、新しいおもちゃで遊んだりして、ストレス発散の機会を作ってあげましょう。留守番の時間が長い場合には、中におやつを入れられる知育おもちゃなどで退屈を和らげてあげる方法もおすすめです。
(4)適切な食事と睡眠で免疫力を高めておく
免疫力の向上は、指間炎をはじめ、様々な病気に負けない体作りに不可欠なポイントです。愛犬の免疫力を常に高く維持するためには、栄養バランスの整った食事や良質な睡眠がとても重要。免疫力が高く維持されていれば、指間炎を引き起こす細菌は過剰に増殖できないので、炎症が起きてしまうリスクは少なくなります。
また、普段から免疫力向上に効果が期待できるサプリメントを摂取しておくのも良いでしょう。指間炎やアトピーなどの皮膚トラブルには、オメガ脂肪酸やアガリクスが配合されているサプリメントが効果的です。ぜひ元気な時からこれらを摂取して、病気に負けない体作りを行ってくださいね。
執筆者:ramoup先生
経歴:ヤマザキ動物看護大学卒業。認定動物看護師・JKC認定トリマー。
動物病院勤務で培った知識・経験を活かし、「病気に関する情報を分かりやすく」お届けします。愛犬・愛猫の病気について、飼い主様がより理解を深める際のお手伝いができれば嬉しいです。