ミニチュアダックスの脱毛症の原因・症状、予防する5つポイント【動物看護士執筆】

ミニチュアダックスの脱毛症の原因・症状とは?

執筆者:竹内Coco先生

動物看護師、トリマー

明るく活発な性格と、長い胴に短い脚、大きな垂れ耳が特徴的で愛らしいダックス。人気犬種として筆頭にあがる犬種です。

そんなダックスですが、脱毛症を起こしやすい犬種であることはご存知でしょうか。ダックスは比較的、皮膚・被毛のトラブルが多いものです。脱毛の原因には皮膚炎が原因となるものや、それ以外の何らかの理由によるものがあります。

そこで今回はダックスによくみられる脱毛症についてご紹介していきます。

ダックスの皮膚、被毛の特長について

まず、ダックスに皮膚・被毛のトラブルが多い原因について、皮膚・被毛の特性を踏まえてご説明していきましょう。

ダックスの被毛の特徴

犬には脱毛の多い犬種と少ない犬種があります。その理由は被毛の仕組みによるもの。犬にはオーバーコート(上毛)とアンダーコート(下毛)と呼ばれる毛がありますが、そのうち、オーバーコートしか持たない犬種を、シングルコート。オーバーコートとアンダーコートを持つ犬種をダブルコートと呼んでいます。

ダックスはオーバーコートとアンダーコートの両方を持つ、ダブルコートの犬種。アンダーコートはトップコートの下に密集して生え、換毛期に大量に抜け変わる毛です。そのためダックスは、抜け毛の多い犬種とされています。

またダックスには、毛の短いスムース、長毛のロング、そして硬くごわごわした被毛を持つワイヤーの3タイプの犬がいます。カラーバリエーションも豊富で、レッド、イエロー(クリーム)、ブラック・タン、ブラウン・タン、ダップル・ブリンドルなど様々。

同じ犬種でありながらカラーや被毛の種類によって個性があるのもダックスの大きな魅力ですね。

そして、特にロングコートのダックスにおいては、成長ホルモンの関与が考えられる柔らかな被毛をしています。これもダックスの特徴であると言えるでしょう。

ダックスの皮膚の特徴

ダックスの皮膚は、チワワやトイプードルと同様に薄い皮膚をしています。そのため皮膚炎や皮膚病を起こしやすくなるのです。また、大きく垂れ下がった耳もダックスのチャームポイントですが、皮膚疾患の種類によっては血管が浮き出るくらいに薄いケースもあります。

ダックスに脱毛トラブルが多い理由

皮膚が薄い

皮膚の薄いダックス。元々犬は人よりも皮膚が薄いものですが、ダックスは犬の中でも特に皮膚が薄い部類に入るとされています。皮膚は、水分を保ち、細菌や紫外線などから体を守る役割を果たしているもの。ですから皮膚が薄いと外部からの刺激や乾燥に弱く、些細なことで炎症を起こしやすくなるのです。

また、犬は被毛で覆うことで薄い皮膚を守っていますが、なんらかの理由により脱毛が起こってしまうと皮膚を守るものがなくなり、よりダメージを受けやすくなってしまいます。

長いマズルと短い四肢

次にダックスの身体的特徴として挙げられるものが長いマズルと短い四肢です。これらもダックスの愛らしさを引き立てていますが、マズルが長いために脱毛や色素沈着がみられやすくなります。また、足が短いため汚れや菌がつきやすく、内股や陰部などに炎症を起こしたり、膿皮症を起こしたりしやすくなります。

ダックスの脱毛症の主な原因、症状、治療法

ダックスによくみられる主な脱毛症の原因、症状、治療法についてご説明します。

マラセチア皮膚炎

ダックスに非常によくみられる皮膚炎の一つがこのマラセチア皮膚炎です。マラセチアは通常健康な皮膚にもいる酵母菌(カビ)ですが、免疫力の低下など何かしらの原因によって異常繁殖し皮膚炎を起こします。

特にダックスは元々たるみやすい皮膚をしているので、慢性化すると皮膚が分厚く皺のようになり、その隙間でさらにマラセチアが増殖しやすくなってしまいます。

・症状

脱毛、色素沈着、脂っぽい皮膚や匂い、痒みを起こします。

・治療法

抗真菌薬のケトコナゾールやイトラコナゾールが投与されます。症状が重い場合には飲み薬、比較的軽度で部分的な場合には塗り薬が処方されるでしょう。また、薬浴によってマラセチアを洗い流すことも効果的。マラセブシャンプーやコラージュフルフルシャンプー、メディダームなどが使用されます。

膿皮症

細菌に感染することで皮膚が炎症を起こし化膿する皮膚病です。皮膚バリアが低下し、通常なら抑えられる細菌が異常繁殖することで膿皮症を起こします。

・症状

脱毛、赤み、痒み、湿疹、かさぶたなど。悪化した場合、食欲不振や沈うつ状態といった、全身性のものにまで発展してしまうこともあります。

・治療法

細菌に効果のある薬を選ぶための検査を行い、治療に有効な抗生剤を決定し投与します。また、局所的にはクリームや軟膏などの塗り薬も処方されるでしょう。効果的な治療法は薬浴で、薬用シャンプーを浸透させ菌を殺菌します。シャンプー剤は殺菌効果のあるクロルヘキシジンや、過酸化ベンゾイルなどが使用されます。

円形脱毛症

名前の通り、円形の脱毛がみられる脱毛症です。原因は、毛包が委縮することによる脱毛。ダックスの場合は、特有の自己免疫反応によって、脱毛を起こすケースもあります。また、人がストレスで毛が抜けることがあるように、犬もストレスによって、脱毛してしまいます。

・症状

円形脱毛症の特徴として、顔面に多く出るケースがみられます。また顔面に限らず、複数みられる場合もあります。脱毛部分では炎症などはなく、色素沈着は起こることがあるでしょう。

犬はストレスを受けると同じ場所を舐めたり噛んだりするという習性があるので、そういった行動による脱毛の場合は炎症がみられることもあります。

・治療法

同じく円形脱毛のみられる、毛包虫症や皮膚糸状菌症になっていないかの診断がされます。また、その他の皮膚炎や内分泌疾患がないかどうかの見極めが行われます。

どれにも該当していない場合円形脱毛症とされますが、遺伝的な要素もあるためはっきりとした治療法はまだ分かっていません。局所的にステロイドなどの塗り薬で改善するケースや、全身に作用する内服としてホルモン剤の投与が効果的なケースもあります。

ストレス性の脱毛の場合は原因を取り除いてあげることが一番の治療法です。

淡色脱毛症

淡色脱毛症は、ブルーやフォーンと呼ばれる淡色の被毛部分にみられる脱毛のことです。比較的稀な遺伝性の皮膚疾患ですが、ダックスではブルーやフォーンといった淡色がよくみられるため、起こることがあります。

毛包形成、メラニン輸送の異常によって皮膚が脆く弱体化し、毛の根本から折れて脱毛します。炎症がみられることがあり、二次的に膿皮症を発症するケースもあります。

・症状

脱毛、皮膚の乾燥、湿疹など。

・治療法

内分泌疾患がないかどうかホルモン検査などを行い診断します。遺伝的皮膚疾患であるため、効果的な治療法はまだ分かっていません。膿皮症を併発している場合には、膿皮症の治療が行われます。予防として、シャンプーや保湿剤による抗菌や保湿を行い、皮膚の状態を良好に保つことが大切です。

パターン脱毛症

パターン脱毛症とは、痒みのない左右対称の脱毛を起こすもので、ダックスにはよくみられる皮膚病です。遺伝性疾患の可能性が高いとされ、耳の脱毛が最も特徴的ですが、頸部、胸部、肛門周囲、大腿部などにもみられます。

一般的に6ヶ月ごろで発症し、1年以上かけて徐々に脱毛していきます。

・症状

赤みや痒みはない、左右対称の脱毛。その他に症状はみられませんが、徐々に被毛が薄くなっていきます。

・治療法

はっきりとした原因が分かっていないので確実な治療法はありません。皮膚糸状菌症やクッシング症候群による脱毛と同じ痒みを伴わない、左右対称の脱毛であることから、それらの病気が潜んでいないかきちんと検査することが大切です。

脱毛以外に症状はなく、命に関わる病気ではないので治療をしないケースもあります。飼い主さんが見た目を気にする場合には、サプリメントなどによる治療が行われることが多いでしょう。

クッシング症候群

クッシング症候群は腎臓のすぐ近くにある副腎という臓器から、通常よりもホルモンを出しすぎてしまう病気です。原因はホルモンを出すように指令を出している脳の下垂体、もしくは副腎そのものの腫瘍によるもの。

約8~9割は、脳の下垂体の異常によってクッシング症候群を引き起こしていると言われています。

・症状

初期症状は水を多く飲み、尿が増える多飲多尿。食欲が増し、腹部が膨れるなどの症状がみられ、ただの太りすぎと勘違いされやすいこともあります。その後、痒みを伴わない左右対称の脱毛がみられます。

クッシング症候群の脱毛の特徴は左右対称、痒みがないこと。初期症状とこのような脱毛がみられたらクッシング症候群を疑う必要もあるでしょう。

・治療法

多くは脳の下垂体の腫瘍のため、手術によって取り除くことは難しく、ホルモンを抑える薬を投与する内科的療法が行われます。副腎そのものに腫瘍がみられた場合には手術で腫瘍を取り除くケースもあります。

ダックスから脱毛症を遠ざける5つの日常ケア

皮膚トラブルや脱毛の多いダックス。ダックスと一緒に暮らすうえで気を付けたい日常ケアについてご紹介します。

栄養バランスの整った食事

ダックスは皮膚トラブルの多い犬種ですが、同時に椎間板ヘルニアにもなりやすい犬種です。体重の増加は、椎間板ヘルニアのリスクを高めるので適正体重を保つことは非常に大切。ですが、急激なダイエットや偏食にも十分気を付けてあげましょう。

犬にとって必要な栄養素が不足すると、脱毛症の原因になりかねません。脱毛症を遠ざけるためにも、免疫力の低下も防ぐためにも、良質なドッグフードを選んであげる必要があります。

特に気を付けたいのが、犬にとって重要な栄養素であるタンパク質。タンパク質は、皮膚・被毛を作る栄養素でもあります。また、筋肉や体のあらゆる部分を作る元となりますので非常に大切なものです。ダックスに多いヘルニアの予防のためには、筋肉をつけることも大切。

タンパク質には植物性と動物性のものがありますが、犬にとっては動物性のタンパク質が重要です。また、安価なドッグフードは小麦やトウモロコシなどの穀類でかさ増しをしているものも多いものです。ドッグフードを選ぶ際には、良質なタンパク質がしっかり含まれているかどうかを確認して選んであげてくださいね。

シャンプーの方法

マラセチア皮膚炎や膿皮症、淡色脱毛症など、治療にシャンプーが効果的な皮膚疾患をご紹介しました。ですが、こまめに洗った方が良いケース、逆に洗いすぎない方が良いケース、しっかり乾かす必要のある場合や、温風が良くない場合など、それぞれ症状や病気によって適したシャンプー剤や、回数、方法は異なってきます。

間違った方法を行うと、逆に悪化させてしまうことも少なくありません。必ず獣医さんに処方されたものを使用し、使用方法を守って行ってあげましょう。

しっかりと運動をさせる

ダックスは元々猟犬として活躍していた犬種。その血統を今でも引き継いでいて、非常に活発で好奇心が旺盛な性格です。そのため、ボール遊びや走り回るのが大好き。小型犬ですがしっかりと運動させてあげましょう。

運動不足はストレスと直結します。よく吠えたり、気が強いといった性質も受け継いでいますので、ストレスを溜めることで攻撃的になってしまう一面もあります。社会性を身に着け、しつけるためにも、スキンシップや運動をさせるといった点は飼い主さんの重要な役割でもあります。

こまめなブラッシング

ダックスはダブルコートで抜け毛の多い犬種です。また、毛玉やもつれは放置しておくと皮膚炎や脱毛の原因にもなるので、こまめなブラッシングは必須となります。

愛犬とのスキンシップや、皮膚の異常に早く気づくためにもできれば毎日ブラッシングをしてあげましょう。

生活環境を清潔に

清潔な生活環境は、皮膚病や脱毛症を寄せ付けないためにとても重要です。今回ご紹介した以外にも、細菌による感染性の皮膚病や脱毛症は多くあります。愛犬がいつも寝ているケージやベッドはこまめに掃除してあげましょう。

また足が短く汚れやすいダックス。散歩から帰ったらしっかりと足回りなどを拭いて、細菌や雑菌を取り除いてあげてくださいね。

執筆者:竹内CoCo先生

経歴:大阪コミュニケーションアート専門学校ペットビジネス科ペットトリマーコース(現在の大阪ECO動物海洋専門学校)卒業。

ペットショップ勤務を経て、現役動物看護士。動物病院で勤務している立場から、「正しい知識を持ってペットと幸せに暮らしてもらいたい」という気持ちで正確な情報をお届けします。