ダックスフンドのマラセチア外耳炎をケアする時の3つのポイント【メディカルトリマー執筆】

ダックスフンドが罹りやすいマラセチア外耳炎をケアする時の3つのポイント

執筆者:大谷幸代先生

愛玩動物飼養管理士、青山ケンネルスクール認定 A級トリマー メディカルトリマー

マラセチア外耳炎について

頻繁に耳を掻く、頭を振る、床や地面に耳をこすりつけるような仕草を見せる、耳あたりから強い臭いがする・・・愛犬に思い当たる点はありませんか?

ダックスフンドのように耳が垂れている犬種は、耳内部の通気性が悪くなりがちで、内部の雑菌繁殖が起こりやすく外耳炎を発症することが多々あります。

外耳炎は慢性化しやすく、上記のような様々なつらい症状を伴います。外耳炎は悪化すると症状が耳のさらに奥まで進行し、内耳炎、中耳炎となることも珍しくありません。耳は犬にとってとてもデリケートな部分です。少しでも気になる点がある時は早急に動物病院に相談をしてあげましょう。

マラセチア外耳炎の原因

ダックスフンドの耳に起こるつらい症状の原因の1つにマラセチアという菌が関係しています。マラセチアとは実は皮膚にいる常在菌の1つで「カビ」の種類です。

正常な状態であれば目立ったトラブルにはなりませんが、ダックスの耳のように通気性が悪い、適度な湿り気と温度が保たれているなど条件が揃うと、つらい症状を引き起こします。

また生後間もない子犬や不衛生な環境で生活をすることで、雑菌の繁殖が進み、症状が悪化することも多い病気です。

また爪先に菌が増殖した場合、その爪で耳や体を掻くことで症状が全身に広がるというリスクも伴います。

マラセチア外耳炎になりやすい犬種

マラセチアが正常な状態から急激に増殖し、トラブルを起こすには一定の条件が必要です。その条件が適度な湿気と温度だと言われています。

ダックスのように耳が垂れている犬種は耳内部がこの条件を満たしやすいことから、発症のリスクが高いといえるでしょう。

同様のケースでは

・プードル

・シュナウザー

・コッカー

・ビーグル

・キャバリア

・ゴールデンレトリバー

・ラブラドールレトリバー

なども同じトラブルが起こることがたびたびあります。

マラセチアによる外耳炎は早期治療開始で1,2週間の点耳薬の利用で完治させることが可能ですが、再発を起こすことがたびたびあります。

一旦は完治をしても、耳自体の状況は変わらないままなので、中には短い期間で完治と再発を繰り返してしまうことがあります。

マラセチア外耳炎の治療方法

治療は早期発見、早期治療が何よりです。

動物病院を受診し、簡易検査を受けることで耳内部の雑菌の状態を確認することが出来ます。

マラセチア外耳炎の治療には点耳薬が用いられることが一般的です。

一日数回、耳に薬剤をたらしいれるだけという簡単な方法で完治させることが出来ます。

ただ中には耳の中に薬が入る瞬間の違和感を過度に嫌がることもあるので、家庭での点耳が難しい場合は、通院治療や別の方法を検討する必要があります。

痒みが強い場合、自身の爪で耳内部を傷つけてしまっていることがあります。この場合、患部からの出血や化膿への治療も必要です。症状によっては化膿を予防する抗生物質の服用が必要になることもあります。

マラセチア外耳炎のときに気をつけたいこと

マラセチアの菌は日々増殖を続け、次第に耳の奥まで進行してゆきます。治療が遅れることで、簡単な点耳では対処が難しくなることもあります。

痒みや強い臭いなどの異変を感じた時は早急に動物病院を受診しましょう。

治療中に家庭で心がけておきたい点は

・爪を短く切りそろえておく

・痒みが強い場合はエリザベスカラーを着用し患部を保護する

・決められた回数、期間の投薬を必ず実施する

・耳掃除をする際は2次感染を予防するため、使い終わった綿棒やティッシュは密閉した袋に入れ処分をする

強い痒みが原因で耳を執拗に掻いてしまうことが多々あります。

この衝動は家族が叱ったり、無理に制限をすることでかえってストレスになり悪化することがあります。

エリザベスカラーを利用し、確実に患部を保護しつつ、早期完治を目指しましょう。

マラセチア外耳炎の治療のためには、耳内部を清潔に保つことが効果的です。

家庭で耳掃除をする場合は

・週に数回、症状によっては毎日行う

・患部を刺激しないよう丁寧に行う

・使用終えた綿棒などは即座に処分する

・家族の手洗いも徹底する

ただし耳内部が赤く腫れている、愛犬が耳に触れられることを過度に嫌がるという場合は無理強いをせずに動物病院に相談をしましょう。

こんなことでマラセチア外耳炎がよくなったマカロンちゃん

まだ生後3か月のマカロンが初めてトリミングに来店してくださった時、あまりの耳の状態に驚かされました。

マカロンの耳の中は真っ黒な汚れがたくさんついていて、悪臭を放っていたからです。子犬ならではで、元気一杯にはしゃぎまわるものの、ふとした瞬間に立ち止まり耳を掻き、頭を振りという行動は深刻な外耳炎を患っている症状そのものです。

でも実は飼い主さんにとってマカロンは初めて飼う犬だったこと、ペットショップから購入した時点ですでに臭いが気にはなっていたものの、異常なことだとは気がつかなかったそうです。

ダックスフンドならみなこの程度の体臭がするものと勘違いされていたそうです。

トリミングショップの利用はワクチンが終わってからと思っていたこともあり、なかなか異常に気が付くきっかけがないまま過ごされてしまっていたそうです。

マカロンのように耳が垂れている犬種の場合、今後も定期的に耳掃除が必要になることを説明し、飼い主さんと一緒に耳掃除に取り組みました。

もちろん子犬ですから、じっとしていてくれないこと、初めての耳掃除に飼い主さんもこわごわでしたが、何とか手順を身に着け、今後は完治、再発予防に取り組むことになりました。

マカロンにとっても子犬のうちから耳掃除を習慣化することは、健康管理はもちろんしつけの面でも大切な意味があります。

これからは家庭での定期的な耳掃除と並行してトリミングショップの利用時に状態をプロの目で確認するという取り組みを続け、マカロンの耳の健康を維持してゆく予定です。

マラセチア外耳炎にならないために、予防や日ごろのケア3つのポイント

マラセチア外耳炎の効果的な家庭で行うべき3つの対策をご説明させていただきます。

1.定期的な耳掃除で耳内部を常に清潔にしておくこと

日ごろから、耳掃除を習慣化し、汚れや雑菌が増殖する前に取り除いてあげましょう。

耳掃除を行う際は

・専用のローションを使用する

・ペット用綿棒を使う

という方法を心掛けておきましょう。

ペットの耳掃除専用ローションは速乾性があり、使用後に耳内部に余分な水分を残さずに乾燥させることが出来ます。こびりついてしまった耳内部の汚れを浮かせてくれるので、簡単に拭き取ることが出来ます。

この時、安易に水道水を使ってはいけません。水道水は汚れを浮かせることはできても、完全に乾燥するまでに時間がかかるからです。耳掃除後に耳をたらした状態が続くことで、内部に湿気が充満しかえって状態を悪化させてしまいかねません。

使用する綿棒はペット用製品を利用すると、持ち手の部分が長いので、耳内部までしっかりと目が届き、安全にお手入れを行うことが出来ます。

2.シャンプー後の耳内部のふき取りを忘れずに行うこと

自宅でシャンプーをする際は必ず耳内部の水分を綿棒でふき取り完了としましょう。体のドライヤーだけで終えてしまいがちですが、実はシャンプー中に耳内部にも水が入りこんでしまっています。

この水分が残留し続けることもまた雑菌増殖を後押しする原因になります。

3.マッサージもかねて耳をめくること

愛犬を撫でる時、遊ぶ時、日常の様々な場面で意識して愛犬の耳をめくってあげましょう。こうすることで、耳内部に空気が流れこみ通気性が向上します。意識して家族が行うことで、雑菌の増殖を予防することにつながり、つらい症状の再発予防にもつながります。

ダックスフンドのチャームポイントでもある垂れた耳は、日ごろからこまめなケアと異変の早期発見がかかせません。スキンシップもかねて耳の状態をいつも気にかけてあげましょう。

執筆者情報:大谷幸代先生

愛玩動物飼養管理士、青山ケンネルスクール認定 A級トリマー メディカルトリマー

学生時代にイギリスへドッグトレーニングの勉強のため、短期留学。その後、ペットショップ販売員、トリマー、ドッグトレーナー、ペットシッターなど様々な仕事を経験してきた。ホリスティックケアアドバイザーや日本アロマテラピー協会認定アロマテラピーインストラクターなどの資格も取得。ペット関連用品の開発、雑誌などへのコラム執筆を手がけるなど、【犬を飼う生活から、犬と暮らす生活へ】の実現をめざし、幅広く活躍している。