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犬の指間炎について
執筆者:竹内Coco先生
動物看護士、動物病院勤務
指間炎とは指の間、もしくは足裏の肉球の間がなんらかの原因により炎症を起こしてしまう症状のことを言います。
犬がよくとる行動の一つに手足を舐める、というのが挙げられます。犬はグルーミング(毛づくろい)として自分の体を舐める習慣がありますが、あまりに手足ばかりを舐めているのであれば要注意。四六時中、手や足を気にして舐めているのは指間炎を起こしているサインかもしれません。
症状は赤みや痒み、ひどくなると腫れてできもののようになってしまうことも。足裏に腫瘍ができたと、不安な表情で病院に来られる飼い主さんもいます。
また、腫れることによる痛みで、足を床につけることができず、びっこを引いたような歩き方になってしまうこともあります。
指間炎のほとんどが痒みを伴うので、犬は執拗に舐めたり、噛んだりします。それが傷や赤みの原因になってしまい悪化することも。
犬の指間炎は、比較的なりやすいものです。その原因は様々ですが、アレルギーなどから起きている皮膚の炎症であることが多いようです。その場合、完治には時間がかかったり、再発したりしやすいものになります。
犬の指間炎の原因
犬の手足は地面に直接触れる部分なので、怪我をしたり雑菌がついたりと、トラブルになりやすい場所です。指間炎の原因として考えられるものには次のようなものがあります。
○アレルギー性皮膚炎
犬も私たちと同じように、食べ物が合わずに食物アレルギーを起こしたり、環境やハウズダストによるアトピー性皮膚炎を起こしたりします。この炎症は指間でもよく起こります。指間炎の原因で特に多いのが、このアレルギー性皮膚炎によるものです。
アレルギー性皮膚炎が原因の場合はそのアレルギーの元になるものを取り除かなければすぐに再発してしまいます。とはいえ、アレルギーの元となるものを完全に取り除くのは難しい場合もあり、完治には時間がかかることがあります。
○感染症
指間炎は、感染症からも起こります。皮膚糸状菌症や、マラセチア皮膚炎など、真菌(カビ)が原因による皮膚炎がありますが、発症部位が指間であることもあります。
犬の足裏は毛が密集していて、肉球の間は通気性が悪い場所です。一度濡れると乾きにくく体温によって暖かい、このような高温多湿の場所は真菌が最も好む場所なのです。
そのほかには、ダニ・ノミの寄生による皮膚炎もあります。アカラス(ニキビダニ)と呼ばれるダニに感染すると、脱毛し徐々に皮膚がただれて炎症を起こします。このアカラス感染症の症状が良く出る部位が、目や口周りなどの顔と足先なのです。
○外傷
手足にケガをすることでも、指間炎になってしまいます。直接地面を歩くので、散歩に行ってケガをしてしまったり、夏の暑い時期にアスファルトを踏んで火傷をしてしまうこともあるかもしれません。
痛みや痒みが気になり、自分で舐めることで指間炎になってしまうケースもあります。
○ストレス
ストレスが原因で指間炎になると聞くと驚くかもしれませんが、犬はストレスを感じると手先をよく舐める習性があります。気持ちを落ち着かせるために行っていることもありますが、退屈だったり、飼い主さんにかまってもらいたくてやっていることもあるんです。あまりに舐めすぎると皮膚が炎症を起こすので、指間炎になってしまいます。
このようにストレスが原因で手足を舐めている場合は、なるべく叱らないようにしましょう。止めさせようと叱ると、それがさらにストレスになってしまうこともありますし、舐めるとかまってもらえると認識してしまうこともあるのです。
指間炎になりやすい犬種
指間炎の原因にケガやストレスがあるので、比較的どの犬種でもなるものです。散歩に行ってケガをすることや、日常でストレスを感じることはどの犬にもあり得ることだからです。
特になりやすい犬種を挙げるとすれば、そのほかの原因による指間炎になりやすい犬種です。アレルギー性皮膚炎やマラセチア感染症になりやすい犬種は、指間炎になるリスクが高いと言えるでしょう。
柴犬、パグ、ウエストハイランド・ホワイト・テリア、コッカー・スパニエル、シーズー、トイプードル、ダックス、レトリーバー系などが挙げられます。
犬の指間炎の治療方法
指間炎は、犬が手足をよく舐めていることにあまり関心を持っていないと気付きにくいものです。気づいたときには、悪化してしまっていることも。
愛犬の様子をよく見て、あまりにしつこく舐めているようであれば、指の間や足の裏をチェックしてあげてくださいね。治療法には次のようなものがあります。
①基礎疾患の治療
アレルギー性皮膚炎や、感染症による指間炎はそれらの治療をすることが重要です。食物アレルギーの場合には食べ物を見直す、真菌による指間炎の場合には抗真菌薬を使用するなど、それぞれに合った治療が必要になってきます。
さらに、マラセチア皮膚炎などが原因の場合は、皮脂を過剰に分泌させる内分泌疾患が隠れていることもあるので、注意が必要です。
②塗り薬
指間炎が軽度のときや、炎症部分が広くないときには、塗り薬が処方されます。真菌(カビ)によるものの場合には抗真菌薬、ケガによるものの場合には抗生物質など、原因に合ったものを1日1回~2回、患部に塗ってあげます。
③飲み薬
指間炎が全ての手足に出ていたり、全身にも痒みがある皮膚炎を伴っている場合には、飲み薬が処方されます。飲み薬も、原因によって処方される薬が異なります。
痒みや炎症がひどい場合には、まずは症状を抑えるために、ステロイド薬が処方されることもあります。
④サプリメント
塗り薬を塗ってあげても、犬は気になって舐めてしまうことがあります。舐めてしまっては、せっかく塗った薬の効果は期待できません。ご飯の前に塗ったり、塗った後は遊んであげるなどして気を紛らわせることがポイントです。
それでも気にしてしまう子には、サプリメントがおすすめ。内服は即効性や効果性には優れていますが、全身に作用してしまうもの。さらに副作用の心配もあります。
飲み薬と違い、サプリメントには副作用はないので、どうしても塗り薬が難しい子にはサプリメントを取り入れてみるのも良いかもしれません。
指間炎のときに気をつけたいこと
指間炎はなかなか治りにくい場合もあります。なるべく早く、スムーズに治療を進めるために気を付けたいことをご紹介します。
◆シャンプー
指間炎のときには、患部を清潔にしておくことが大切です。薬用シャンプーは効果的ですが、皮膚炎の状態によっては刺激が強すぎることもあり、逆に炎症が激しくなってしまう場合もあります。
また、洗いすぎも皮膚バリアを低下させることになります。清潔にすることは大切ですが、適切なシャンプーの頻度も症状によって様々。獣医さんに皮膚に合ったシャンプーを処方してもらい、正しい頻度で使用することをおすすめします。
◆手足をよく乾かす
散歩やシャンプーのあと、手や足先を濡れたままにしていませんか?ちゃんと乾かしてるつもりでも、肉球の間の奥まった部分は乾ききっていないことが多いものです。
湿ったままにしておくと指炎症の原因となる真菌(カビ)は増殖し、なかなか治りません。しっかりと拭いてあげて、乾燥させることが大切です。
◆舐めさせない
指間炎はほとんどが強い痒みを伴います。そのせいで、犬は患部を舐めたり、前歯でかじっていることが多くなります。そうなると炎症はなかなか引きません。噛むことで傷を作ってしまい、悪化することもあります。
犬が気にして舐めているときは、エリザベスカラーをつけるなどして、舐めることができないようにしましょう。犬が嫌がるのはもちろん当然ですが、エリザベスカラーを提案するとかわいそうと嫌がる飼い主さんも多いものです。
確かにかわいそうかもしれませんが、指間炎が長引くことは愛犬にとってもストレスです。舐めないことは、治療をスムーズに進める上で、とても重要なポイントになります。
大抵の子はすぐに慣れるので、早く治すためと思って少しの間我慢してもらいましょう。
◆食事
食物アレルギーから炎症が来ていることも多いものです。食物アレルギーが疑われる場合は食事を見直すことも大切です。獣医さんに相談し、タンパク質を別のものに変えたフードなどに変更しましょう。
指間炎にならないために、予防や日ごろのケアの5つのポイント
ご紹介したように、指間炎は様々な原因により起こります。全ての原因を取り除くことは難しいですが、ある程度ポイントを押さえれば予防することができます。
日常で気を付けたいポイントを5つご紹介しましょう。
1.しっかり乾かす
まずは真菌(カビ)からの感染をなるべく予防しましょう。そのためには、先程もお伝えしたようにしっかりと乾かすことが大切です。
散歩で手足が濡れたときや、シャンプーをした後など、しっかりと水気を取り除いてあげましょう。
2.ストレスを与えない
犬がストレスによって足を舐めていることは多いものです。また飼い主さんにかまってほしいこともあります。
長時間留守番させたり、相手をしてあげていなかったり、などといったことは思い当たりませんか?
人には気づかないことで犬はストレスを感じていることがあります。ストレスの原因を見つけることが難しい場合もありますが、愛犬の様子をよく気にかけてあげるようにしてくださいね。
3.足裏をこまめにチェック
指間炎は初期の段階では、まだそれほど痒みがないこともあります。また、指の間や足の裏はすぐに目に見える部分ではありませんので、気づくのが遅くなることも。早めに気づき軽度の段階で治療を始めることで、早く治すこともできます。
スキンシップは愛犬との楽しみの一つですよね。そのときに、ケガや赤みがないか、足裏や指の間もチェックしてみてあげてください。
4.毛刈り
日常のケアをしやすくし、通気性をよくするために、足裏の毛はこまめに刈ってあげましょう。指の間や手足の付け根までバリカンを当てるスタイルも効果的です。
プードルに多いカットなので『プー足カット』や『足先バリカン』などと呼ばれています。若干好みは別れるカットデザインですが、ケアをする上ではとても楽で効果的なカット方法なので、試してみても良いのではないでしょうか。
5.免疫力の低下に気を付ける
免疫力が低下すると、元気であれば負けることのない菌にも負けてしまいます。そのせいで真菌(カビ)が増殖してしまうことも。免疫力の低下は指間炎だけではなく、皮膚病、さらにはそのほかの病気にもなりやすくなってしまいます。
免疫力を上げるには、バランスの良い食事が大切です。また、長期的に投与することが可能なサプリメントで補うこともおススメです。
犬の指間炎のまとめ
指間炎は皮膚炎と密接な関係があります。皮膚炎になりやすい子は指間炎にもなりやすいと言えるでしょう。
また、初期段階では気づきにくいこともあります。コミュニケーションをとってあげることは、愛犬にとってストレス解消にもなります。こまめに手足をチェックしてあげて、なるべく早く気づいてあげてくださいね。
日ごろのケアで、なるべく指間炎にならないような予防を心掛けてあげましょう。
執筆者:竹内Coco先生
動物看護士、動物病院勤務
大阪コミュニケーションアート専門学校ペットビジネス科ペットトリマーコース(現在の大阪ECO動物海洋専門学校)卒業。
ペットショップ勤務を経て、現役動物看護士。動物病院で勤務している立場から、「正しい知識を持ってペットと幸せに暮らしてもらいたい」という気持ちで正確な情報をお届けします