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犬のマラセチア皮膚炎とは?
執筆者:ナルセノゾミ先生
動物看護士、愛玩動物飼養管理士
マラセチア皮膚炎は皮膚にいる真菌(カビ)が原因
マラセチア菌は犬の皮膚にもともと存在する真菌。カビの仲間です。
健康な皮膚の状態では悪さをすることはありませんが、何らかの原因によって異常繁殖すると、痒みや赤みを伴い皮膚炎を引き起こし、マラセチア皮膚炎となってしまいます。
マラセチア皮膚炎はジメジメした環境を好むため、梅雨や雨の多い時期になると多くなる傾向があります。
また、マラセチア菌は皮脂が大好物。
皮脂の分泌が多くなるとマラセチア皮膚炎を発症しやすく、再発することも多い皮膚病です。
皮膚のバリア機能が低下しがちなアレルギー体質のワンちゃんも、マラセチア皮膚炎になりやすいと言えますね。
治療にも時間がかかるため、なるべく早めに気付いてあげることが大切です。
マラセチア皮膚炎の症状
マラセチア皮膚炎は皮脂を好むため、皮脂がたまりやすい顔、わきの下、内股、耳、肛門まわりなどに症状がみられます。目立たない場所に症状が出ることも多いので、愛犬の行動や皮膚の状態は日々チェックしてあげたいですね。
また、皮脂分泌が多いシーズー、コッカースパニエル、レトリバーなどの犬種はマラセチア皮膚炎になりやすいと言われています。
症状には個体差がありますが、マラセチア皮膚炎の症状は下記の特徴が挙げられます。
強い痒み
マラセチア皮膚炎の大きな特徴として、強い痒みがあります。
犬が体を掻くときは、痒くないときもありますが、頻繁に体を掻いたり噛んだりしている場合は注意が必要です。
強い痒みであれば掻き過ぎて出血したり、その傷が更に皮膚炎を拡大させてしまうこともあります。
一晩中体を掻き続けている状態では寝不足になり、抵抗力も弱まるため悪循環に陥ります。
皮膚の赤み、黒ずみ(色素沈着)
皮膚炎では、皮膚が赤くなる症状もよく見られます。
慢性化すると皮膚そのものが黒ずむことも。
色素沈着がおこると皮膚も硬くなり、ターンオーバーを妨げる原因にもなります。
悪化すると皮膚が硬くなり鱗のようになってしまい、皮膚が目立つようになります。
ベタつき、脂っぽいフケ
マラセチア菌は皮脂の多い場所を好み、脂肪分解酵素や脂肪酸を分泌します。
そのため、マラセチア菌が増えるとそれだけ皮膚がベタつくという特徴があるのです。
フケは皮膚が乾燥しているときに出ると思われがちですが、マラセチア皮膚炎ではベタベタしたフケが見られます。皮膚もベタベタして、触ると脂が多く出ていることがわかります。
脱毛症状
マラセチア皮膚炎では、症状が出ている部位が脱毛することがあります。
皮膚がむき出しになり、徐々に範囲が広がります。
完全に脱毛せずとも、被毛が薄くなる脱毛症状がみられることも。
脱毛箇所を掻くことで、皮膚炎の悪化や出血することもあります。
ベタベタした耳垢
マラセチア菌が耳で異常繁殖すると、こげ茶色や黒いベタベタした耳垢が出ます。
「普段より耳垢が多い」「耳垢の粘り気が強い気がする」という場合は要注意。
マラセチア菌は皮膚病だけでなく、外耳炎を引き起こす原因にもなりますから、異常に気付いたらすぐにかかりつけの動物病院へ相談しましょう。
また、普段から1~2週間に1度は自宅でも耳掃除を行い、耳垢の状態や量をチェックしておきましょう。
独特の臭い
マラセチア菌は真菌(カビ)の中で酵母に分類されます。
臭いがあり、マラセチア皮膚炎を引き起こしている場合は体臭が甘ったるい独特の体臭になります。
体臭が強くなったと感じる場合は、マラセチア菌による酵母臭の可能性があります。
細菌性皮膚炎への二次感染
マラセチア皮膚炎を発症している場合は、細菌性皮膚炎を併発しているケースがよく見られます。
マラセチア菌は、皮膚の常在菌であるその他の細菌と一緒に増加する性質を持っており、マラセチア皮膚炎だけでなく細菌性の皮膚炎を発症していることもあります。
いずれにしても皮膚のバリア機能が低下していることには変わりありませんので、きちんと治療する必要があります。
マラセチア皮膚炎の治療法
マラセチア皮膚炎になった場合、まずは痒みを取り除き、皮膚で繁殖し続けるマラセチア菌を減らす処置が必要です。
痒み止めの服用と同時に、皮脂を抑える外用の薬、また週に2~3回の抗真菌シャンプーで体の皮脂を落とします。
マラセチア皮膚炎用のシャンプーは、よく泡立ててマッサージしながら皮膚を洗浄し、5~10分ほどつけ置きの時間をつくるとより効果的です。
治療中は頻繁にシャンプーをすることになりますから、吸収性の高いタオルを用意しておくとドライヤーの時間も短縮できますね。
また、痒みが強い場合や脱毛症状が重症化している場合は、掻きむしり防止のためにエリザベスカラーを付けて生活しなければならないこともあります。
症状が軽い初期段階でも、少なくとも1ヶ月は治療期間を設けるケースが多く、症状が重い場合はそれだけ長い期間治療に時間を費やすことになります。
再発の可能性が高いマラセチア皮膚炎
マラセチア皮膚炎は、再発することが多い皮膚病の1つです。
もともと皮脂の分泌量が多い体質のワンちゃんであれば、治療し症状が無くなっても湿気の多い季節に発症しやすくなります。
アレルギー体質のワンちゃんも、皮膚の状態や体調によってマラセチア皮膚炎を繰り返すことも珍しくありません。
マラセチア菌そのものが、アレルゲンとなって皮膚炎を起こすこともあるのです。
マラセチア菌はもともと犬の皮膚にいる常在菌ですので完全に除去することは難しく、症状を最小限にするためにコントロールすることが重要です。
マラセチア皮膚炎の治療と合わせて行いたい対策
マラセチア皮膚炎は、動物病院で処方された薬の他、ワンちゃんの自然治癒力を高めるためのサポートが必要です。
皮膚炎を改善させるには、傷ついた細胞を修復させることと、低下した免疫力を上げ、皮膚のバリア機能を高めることが大切です。
また、マラセチア皮膚炎の発症は体質によるところも大きいため、体の内側から皮膚炎を良くするアプローチをしてあげましょう。
湿気を溜めない
マラセチア菌に湿気は厳禁です。
マラセチア皮膚炎は梅雨や雨の多いジメジメした時期に多く発症します。
室内も窓を開けて空気の入れ替えをし、湿度が高くならないように気をつけるといいですね。除湿器、空気清浄機などの設置も効果的です。
治療としてのシャンプー後もしっかり乾かし、皮膚に湿気を残さないようにしましょう。
また、肉球には犬の汗腺があり、足の裏は湿気が溜まりやすい部分。
お散歩から帰ったあとに足を洗うときも、しっかりドライヤーで乾かすことが大切です。
食事の見直しをする
マラセチア菌は皮脂の多い場所を好みます。
皮脂の分泌が多いと、それだけマラセチア皮膚炎を発症しやすい状態になりますが、皮脂の分泌量は食事で抑えることも可能です。
皮膚炎全般に良いとされているのが脂肪です。
中でも犬の体内で合成することができない必須脂肪酸は、食事から摂るしかありません。必須脂肪酸は植物油、魚油に多く含まれています。
愛犬の慢性的な皮膚炎に悩んでいた飼い主さんが、食事をドッグフードから手作り食に変えた途端、毛ヅヤや皮脂の状態が良くなったという話はよくあります。
手作り食が難しいようなら、ドッグフードを見直してみるのもいいですね。
体は食べたものでつくられています。
体質だからと諦める前に、出来ることを少しずつ始めてみましょう。
ストレスを溜めさせない
自然治癒力を高める上で、ストレスは大敵です。
マラセチア皮膚炎では強い痒みを引き起こすため、痒くて眠れなくなることも多く、ワンちゃんに大きなストレスと体力に負担がかかります。
ストレスを抱えていると免疫力が低下するため、皮膚炎が悪化するという悪循環に陥ります。
薬で症状を抑えることはもちろんですが、適度な運動やスキンシップでストレスを溜めないように注意しましょう。
「病は気から」は人間だけに当てはまる言葉ではありません。
大好きな飼い主さんと楽しい時間を過ごすことは、ワンちゃんにとって一番のビタミンになります。
サプリメントで免疫を高める
マラセチア皮膚炎を良くするために、サプリメントの活用もオススメです。
不足しがちな栄養補給だけでなく、特定の成分を体に取り込む事によって体の免疫機能を高める効果の期待できるサプリメントもあります。
マラセチア菌は真菌でカビの仲間ですが、同じ真菌類であるキノコ(アガリクス)を100%使用した【キングアガリクス100ペット用】は体の免疫機能を勘違いさせてはたらきを強める、というサプリメント。
アガリクスに含まれる成分とマラセチア菌は非常に良く似た構造をしており、体に入ると免疫細胞が活発になることが認められています。
免疫細胞が元気になると、皮膚炎をもたらすマラセチア菌をやっつけてくれるのです。
アガリクスそのものは体にとって良いもので、自律神経を整えたり皮膚や被毛の状態を良くしてくれるので、一石二鳥、一石三鳥のサプリメントですね。
体質改善をしながらマラセチア皮膚炎と付き合っていこう
アレルギー・アトピー体質、皮脂が出やすい体質のワンちゃんは、マラセチア皮膚炎を繰り返すことが多いです。
また、他の病気で免疫機能が低下した場合にも発症リスクは高まります。
マラセチア皮膚炎が治ってもマラセチア菌そのものは皮膚にいつづけるため、再発することも珍しくありません。
そのため、一度発症したらその都度完治させ、長い目で見てワンちゃんの体質を改善させていくことも必要です。
体質改善は数日で効果の出るものではありませんが、免疫力が高まり体が強くなれば、マラセチア皮膚炎だけでなく他の病気の予防にもなります。
神経質になりすぎず、ワンちゃんの体質として一緒に付き合っていきましょう。
執筆者:ナルセノゾミ先生
動物看護士、愛玩動物飼養管理士
仙台総合ペット専門学校で、動物看護・アニマルセラピーについて学ぶ。
在学中は動物病院・ペットショップの他、動物園での実習も経験。
犬猫、小動物はもちろん、野生動物や昆虫まで、生粋の生き物オタク。
関わる動物たちを幸せにしたい、をモットーに活動しているWebライター。