犬の脱毛症の原因・症状、気を付けたい4つのポイント【動物看護師執筆】

犬の脱毛症の原因・症状、気を付けたい4つのポイント

執筆者:ramoup先生

動物看護師、JKC認定トリマー

犬の脱毛症について

「あれ?うちのこ、こんなに毛が薄かったっけ?」

「この前までふさふさだったのに、いつの間にかハゲが…」

愛犬の姿をみて、こんな風に思った経験はないでしょうか。

もともと犬は抜け毛が多い動物なので、正常な範囲内であれば心配はいりません。

季節によって毛が生え変わる時期「換毛期」では、飼い主さんも驚くほどごっそりと毛が抜けることも。

ですが、あまりにも抜け毛がひどかったり、一部分だけ抜け毛がみられるような時は要注意。

いつまでも新しい毛が生えてこない場合には、病気などが原因で脱毛症を起こしている可能性があります。

犬が脱毛症を起こしている場合は、脱毛の部位によって3つのパターンに分けられます。

【脱毛症のパターン】

・局所的(人間でいうと円形脱毛症のようなイメージ)

・部分的(顔やお腹、しっぽの付け根や足先など)

・全身的(全体的に毛が薄い、脱毛している範囲が広いなど)

犬の脱毛症の原因

ひとくちに脱毛症といっても、病気によって原因や症状は違います。

一般的に犬の脱毛症は皮膚トラブルが原因だといわれていますが、他にも原因は様々。

ここでは、犬が脱毛する理由として考えられるものを大きく6つに分けてみました。

1.遺伝

シュナウザーやボクサーなどに多い「季節性脱毛」など、特定の犬種で起こりやすい脱毛症が分類されます。

その他、毛色がブルー、シルバー、フォーンなど淡い犬に多い「淡色被毛脱毛症」やポメラニアンに多いアロペシアXなど。

2.栄養不良

丈夫で健康な毛を生やすためには、たくさんの栄養分とタンパク質が必要です。

質の低いドッグフードや加齢、寄生虫感染によって栄養素が十分に吸収できないと、新しい毛が生えづらくなります。

3.自傷性

ストレスや皮膚の痒みによって自分の体を噛んだり、舐めたりすることで脱毛します。

食物アレルギーやアトピー、ノミダニなど、直接的に脱毛が起きる病気ではないものも自傷性に分類されます。

4.病気による毛包破壊

犬の脱毛症でもっとも多い原因であり、感染症(毛包炎や膿皮症)や自己免疫性疾患(免疫介在性皮膚炎、落葉状天疱瘡(らくようじょうてんぼうそう))によって引き起こされます。

病気によって毛包(毛を作り出す器官で毛穴なども含まれる)が破壊されてしまうと、毛が細くなって脱毛を起こします。

5.ホルモンの分泌異常

ホルモンの分泌が乱れることによって、毛が生え変わるサイクル「毛周期」に異常が起こります。

甲状腺機能低下症やクッシング症候群、性ホルモン失調症などの病気が原因です。

6.犬種特有のもの(生まれつき)

生まれつき毛が生えていない・少ない犬種で、健康上の問題はありません。

代表的な犬種としては、チャイニーズ・クレステッドドッグ、メキシカン・ヘアレスドッグなどがあります。

その他、犬の脱毛症には「バリカン後脱毛」や「パターン脱毛症」などもあります。

毛を復活させるには原因の特定がなによりも大切なので、思い当たる点があれば獣医師に相談してみましょう。

脱毛症になりやすい犬種

脱毛症の原因が色々あるということは、かかりやすい犬種も原因によって違うということ。

発症しやすい犬種は病気によって違うので、「この犬種は脱毛症になりやすい!」と断言することは難しいのですね。

とはいえ、ほとんどの脱毛症は小型犬で起こりやすく、大型犬や中型犬にくらべると圧倒的な発症率です。

小型犬のなかでも脱毛症を発症しやすいとされている犬種を、以下にまとめてみました。

【脱毛症になりやすい犬種】

・ヨークシャ・テリア

・イタリアン・グレーハウンド

・トイ・プードル

・ボストン・テリア

・チワワ

・ポメラニアン

・ミニチュア・ピンシャー

・ミニチュア・ダックスフンド

・パピヨン

・シェットランド・シープドッグ

・柴犬  など

小型犬は神経質な気質の犬が多く、ストレスによる自傷や食欲不振を起こしやすい傾向があります。

ペットとして改良を重ねられてきた歴史のなかで、遺伝性の疾患の発症リスクも上がっているのかもしれませんね。

ちなみに柴犬は生まれつきアレルギー体質の犬が多く、様々な皮膚疾患にかかりやすい犬種といえます。

柴犬は皮膚のバリア機能が体質的に弱いので、普段から規則正しい生活を心がけておきましょう。

脱毛症の治療方法

私たち人間もそうですが、犬の脱毛症を治すためには「脱毛の原因」を突き止められるかが重要なポイント。

脱毛部位や範囲、犬が痒がっているかどうかはもちろん、普段の生活で思い当たることはないか、じっくりと検討していくのです。

治療法は脱毛の原因によって違ってきますが、アトピー性皮膚炎など痒みがある場合は、ステロイド剤で炎症を抑えます。

合わせてノミダニなど外部寄生虫が原因の場合は寄生虫駆除剤の投与、ホルモン異常であれば病気の治療が必要ですね。

また、皮膚がベタベタしているなど、皮膚の状態によっては薬用シャンプーや毛刈りなどを行うことも。

脱毛症の原因が分からない場合には、体の免疫力を上げる目的でサプリメントなどを使用することもありますよ。

動物病院によっては、脱毛症の治療薬と一緒にサプリメントを処方してくれるところもあります。

脱毛症の時に気をつけたいこと

もしも愛犬が脱毛症にかかってしまったら、気を付けたいことは色々あります。

できるだけ早く脱毛症を治したり、症状が進むのを抑えるためにも、普段の生活から変えていけるといいですね。

ここでは、犬が脱毛症になってしまった時に気を付けたい5つのポイントについて説明します。

1.生活環境を衛生的に保つ

治療中はいつも以上に清潔を保ち、ハウスダストやノミダニによる皮膚トラブルを防ぎましょう。

毛が抜けてしまった部分は普段よりも弱い状態なので、他の皮膚トラブルを起こしやすい傾向があります。

愛犬が使っているタオルやベッドは2日に一度は洗濯し、床には定期的に掃除機をかけてください。

犬の肌に優しい消毒スプレーを使うなど、色々と工夫して清潔を保てるようにしましょうね。

2.脱毛の原因に接触させない

脱毛の原因が分かっている場合は、アレルゲンに接触させないことが大切です。

食物アレルギーなら除去食へ切り替えたり、金属アレルギーなら陶器の食器に変えたり、という感じですね。

金属アレルギーは最近増えてきている病気で、留め具が金属の首輪なども原因になります。

3.規則正しい生活・質の高い食事を心がける

ストレスや栄養不良が原因の脱毛を改善するためには、生活習慣全体を見直さなければいけません。

まずはドッグフードを高品質なものに変更すること、適度な運動や毎日たっぷり睡眠を取ることも必要ですね。

規則正しい生活は体の免疫力を高めるために必要不可欠なので、頑張りましょうね。

4.皮膚への刺激は最小限に

脱毛中の皮膚はとてもデリケートなので、刺激は最小限にとどめましょう。

シャンプーは肌に優しい成分のものを選ぶようにして、すすぎ残しがないようにしっかりと流すこと。

気になるからといって脱毛部分をこすったり、ピン先がとがったブラシでブラッシングするなどは避けてくださいね。

皮膚のバリア機能をしっかりと回復させるためには、できるだけ皮膚を刺激しないのがポイントです。

脱毛症にならないために、予防や日頃のケアの4つのポイント

1.まずは規則正しい生活

脱毛症の時に気を付けたいことと同様、まずは規則正しい生活が大切です。

普段から規則正しい生活を送っていることで、病気に負けない体づくりをすることができますよ。

引っ張り合いっこができるロープやコングなどを使った遊びは犬の関心をひきやすいので、特におすすめ。

毎日少しの時間でもスキンシップをとって、愛犬のストレス解消に繋げましょう。

2.草むらにはなるべく入らない

例えお散歩コースに緑が多くても、草むらにはなるべく入らないようにすること。

草むらには虫や外部寄生虫など様々な生き物が潜んでいますし、皮膚が傷つく可能性もあります。

もちろん心配し過ぎはよくありませんが、柴犬など生まれつき肌の弱い犬種では避けたほうが良いといえますね。

ただし、地面に生えた草や花のニオイを嗅ぐことは、犬にとって最高のストレス解消法。

お散歩でしっかりとストレスを解消するためにも、適度に緑と触れ合うのはとても大切なことです。

草むらさえ避ければ皮膚トラブルのリスクはグッと下がるので、一度お散歩コースを見直してみてはいかがでしょうか。

3.オメガ3脂肪酸やビタミンサプリで皮膚・被毛の改善を

オメガ3脂肪酸やビタミンのサプリを摂取して、皮膚のバリア機能を高めておきましょう。

皮膚や毛ツヤの改善に効果的なサプリメントは数多く発売されていますが、安全性の確認は必要不可欠。

脂肪酸やビタミンのサプリは扱っている動物病院も多いので、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。

4.免疫力向上に効果が期待できるサプリメントを摂取する

免疫力向上が期待できるサプリメントを摂取して、体の抵抗力をアップさせるのも効果的です。

すべてに対処できるわけではありませんが、ストレスや自傷による脱毛症は体の免疫力が高ければ防げるもの。

普段から体の抵抗力を高めておけば、万が一トラブルが起こった場合でも早く回復しやすいですよね。

サプリメントのなかには自律神経のバランスを整えたり、食欲促進など様々な効果が期待できるものもあります。

免疫力は愛犬が健康に過ごすうえで必要不可欠なものなので、ぜひ積極的に摂取していきましょう。

執筆者:ramoup先生

経歴:ヤマザキ動物看護大学卒業。認定動物看護師・JKC認定トリマー。
動物病院勤務で培った知識・経験を活かし、「病気に関する情報を分かりやすく」お届けします。愛犬・愛猫の病気について、飼い主様がより理解を深める際のお手伝いができれば嬉しいです。