犬の脱毛症とは?愛犬が脱毛症になった時に気をつけたい3つのポイント【小動物看護士執筆】

犬の脱毛症について

執筆者:國澤莉沙先生

愛玩動物飼養管理1級、ホームドッグトレーナー1級、小動物看護士

皮膚病は犬がなりやすい病気の一つですが、様々な皮膚病の中でも脱毛の症状はポピュラーです。人間にもある脱毛症ですが、犬の脱毛症にはどのようなものがあるのでしょうか?

また、脱毛症になってしまったらどのように治療すれば良いのでしょうか?脱毛の症状を伴う疾患別にも対応方法をご紹介します。

主な症状とは?

犬の脱毛症はその名の通り、被毛が抜けて身体にハゲができます。身体の一部の被毛が抜けたり、全体的に抜けたりとその形状は様々です。

また、脱毛症にはいくつかの理由がありますが、感染症などの皮膚炎が原因で起こった場合には、脱毛した箇所にベタつきやかゆみなどを伴うことがあります。

また、激しいかゆみによって搔き壊ししてしまうと傷口から二次感染を起こす危険もあります。愛犬にハゲを見つけた場合には、かゆみや湿疹など他に症状がないかをチェックしましょう。

犬の脱毛症の原因

犬の脱毛症の原因は様々であり、いくつかの要因があります。愛犬に脱毛が見つかった場合には早めに動物病院を受診して、早期に原因を特定して治療することが大切です。主な考えられる原因を紹介します。

○遺伝的な疾患

親が脱毛症を患っている場合には、その子にも脱毛症が遺伝することがあります。脱毛しやすい毛質の犬や皮膚が弱い家系の子は脱毛症にかかりやすい傾向にありますので、愛犬をお迎えするときに遺伝性の疾患などがないか親犬の様子を確認してみましょう。

○感染症などの病気

上記で紹介した通り、皮膚炎や腫瘍などの病気が原因で脱毛の症状がでることがあります。他の病気が原因の場合、脱毛の様子は様々です。脱毛の他に症状がないかをチェックします。腫瘍などの病気が原因の場合には、食欲不振や嘔吐・下痢などの症状が見られる場合があります。

○免疫機能の異常

免疫機能の異常とは自分の免疫機能がなんらかの異常をきたしてしまい、破壊行動を起こすことによる脱毛症です。破壊行動がどの箇所で起きているのかを特定して、治療にあたる必要があるので、早期に動物病院にて検査をしてもらいましょう。

○ストレスによる脱毛症

人にも多い脱毛の原因としてあげられるのがストレス性の脱毛症です。ストレスが原因で脱毛症になるメカニズムとしては、ストレスを感じると身体のホルモンバランスが崩れや自律神経の乱れなどが生じます。

結果、被毛を健康にたもつ新陳代謝や自己免疫機能が低下してしまい、脱毛が発症します。ストレスの原因を早急に特定してストレスの原因を取り除いてあげましょう。

脱毛症になりやすい犬種

脱毛症は犬にとって身近な症状であり、全犬種がかかる可能性がある疾患です。特に毛が密なダブルコートの犬種や逆に一部の毛が薄くなっている犬種などにも起こりやすいです。

また、後発しやすい年齢としてはシニア期の愛犬は被毛の新陳代謝や免疫機能も低下していますので、少し感染症になっただけでも皮膚病にかかる可能性があります。

特に脱毛症が出やすい小型犬・中型犬はチャイニーズ・クレステッド・ドッグ、M.ダックスフンド、チワワ、ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、柴犬などです。

大型犬はラブラドール・レトリーバー、グレートピレニーズ、バーニーズ・マウンテンドッグなどが挙げられます。

上記で紹介したように親犬に脱毛症の疾患がある場合には遺伝的に脱毛症を発症しやすくなります。ポメラニアンやチャイクレなどは毛が薄かったり、一部毛がないため脱毛症の症例が多い犬種です。

脱毛症の治療方法

愛犬が脱毛症と診断された際には、原因の特定が大切です。特に脱毛症を伴う皮膚疾患の治療について紹介します。

◆マラセチア皮膚炎

マラセチア菌という真菌が異常繁殖することによっておきる皮膚疾患です。マラセチア皮膚炎になると激しいかゆみや皮膚のベタつき、独特のにおいなどが症状として現れます。

また、激しいかゆみを伴うので愛犬が炎症部位を書き壊すことで脱毛することがあります。マラセチア皮膚炎の治療は、体から真菌を除去することが基本になります。薬浴や抗真菌薬を使用して皮膚炎の改善をします。

マラセチア菌は身体にいる常在菌ですが、身体の免疫力が低下すると異常繁殖を起こして皮膚炎に発展します。身体の菌のバランスを整えるために薬浴などは継続して行うこともあります。

◆感染症

傷口から雑菌が入ってしまい、感染症を引き起こすことで膿んだ傷口の周りが脱毛することがあります。基本的には抗生物質を使用して傷口を直して雑菌を身体から追い出す治療を行います。

また、痛みやかゆみが激しい場合には症状を緩和させる原因を特定してそれぞれの原因にあった治療法で脱毛の改善を図りますが、全体的に脱毛症の場合身体の免疫力が低下していること多いです。脱毛症を早く治すためにも身体の免疫力をアップさせることも治療のポイントになります。

◆ストレス性脱毛症

ストレスが原因で脱毛症を起こしている場合は、原因の特定が必要です。原因の特定ができれば早めに原因を取り除くことが大切です。

また、体のホルモンバランスをととのえるために漢方薬などを処方する動物病院もあります。心因性の原因の場合の治療法は愛犬によって大きく異なってくるので、愛犬の性格を考慮し、獣医師によく相談して治療法を決めるようにします。ストレス性の脱毛症は繰り返す場合も多いので、ゆったりとした気持ちで治療に取り組むようにしましょう。

脱毛症のときに気をつけたいこと

脱毛症を発症した場合に早く治るように気をつけたいポイントをまとめました。愛犬の症状緩和のためのヒントになれば幸いです。

○飼育スペースを清潔に保つ

脱毛症を発症しているときは、皮膚は他の菌に感染しやすい状態になっていますので、治療とともに清潔に保ってあげることが重要です。フケや抜け毛は感染症の原因にもなります。飼育スペースの掃除、消毒をこまめに行い、愛犬が快適に過ごせる環境を作ることが大切です。

特に排泄物は放置しないですぐに処理するようにします。脱毛症のほかにもたくさんの病気の感染源になりますので、早めに消毒してきれいにしてくださいね。

○薬用シャンプー等で定期的にシャンプーを

皮膚病のケアで重要なことは皮膚の菌バランスを整えることです。薬用シャンプーで愛犬をシャンプーする場合には、必ず獣医さんの指示に従ってシャンプーするようにしましょう。

薬用シャンプーはネットでも購入することができますが、独自の方法で使用するとかえって皮膚の常在菌まで殺菌してしまいさらに皮膚の抵抗力を弱めることになりかねません。皮膚の抵抗力が下がってしまうとさらに皮膚の状態が悪化してしまいます。愛犬の状態にあった回数や薬用シャンプーなどは獣医さんの指示に従って下さい。

健康な愛犬であれば、月に1かいのシャンプーが目安になります。自力でのシャンプーが難しい場合には、トリミングサロンなどをうまく活用して、愛犬の被毛を清潔に保ちましょう。

○体の免疫力を高めるためには?

身体の免疫力をアップさせるにはサプリメントなどを上手に与えて、栄養バランスの取れた食事を与えることがポイントです。特に皮膚に良い効果が期待できるオススメなサプリは「アガリクス茸」を使用した商品です。

アガリクス茸には老廃物を吸着して身体からの排出を助ける効果が高いとされています。また、身体に必要なビタミン・ミネラル・酵素が豊富に含まれており、免疫力の向上に効果が期待できます。人のサプリメントにも使用されているアガリクス茸の豊富な栄養素は犬にも有効です。

脱毛症にならないために、予防や日ごろのケアの3つのポイント

脱毛症にかかってしまった時の対処方法を紹介してきましたが、できれば日常から予防をしてこれらの症状を避けたいものです。日頃からできる脱毛症の予防についてご紹介します。

①ブラッシングをしっかりして換気をしてあげる

日常のケアにブラッシングを取り入れて被毛に湿気がたまらないように換気してあげましょう。ブラッシングにはマッサージ効果もあり、新陳代謝を促して血行を活発にします。さらには古い被毛を落とすことで、新しい清潔な被毛に入れ替わるのでバリア機能が保たれて雑菌から皮膚を守ってくれるのです。

犬の皮膚は私たち人と比べるととても薄く、外部からの刺激を受けやすいです。そんな刺激や雑菌から身を守るために被毛は鎧の代わりをしており、犬にとってとても重要な部位になります。被毛が健康な状態であれば、皮膚疾患を予防することができるのです。

さらにブラッシングにはコミュニケーション効果もあります。普段から愛犬の体をチェックすることで少しの異常にも気づきやすくなり、病気の早期発見ができます。信頼関係を構築する上でもブラッシングは大切です。

②お迎え前に確認を

愛犬をお迎えする前に血統を確認するようにしましょう。脱毛症の原因は遺伝性のことも多くあります。親犬が脱毛症をはじめとする皮膚疾患を患っている場合には、その子犬も脱毛症になりやすい傾向にあるので注意が必要です。

全ての愛犬が遺伝的に脱毛症を発症するわけではありませんが、異様に体が小さかったり、毛が薄いなどの特徴がある場合には将来的に脱毛症などの病気にかかる可能性があることも考慮する必要があります。

③快適な飼育環境を

脱毛症の原因として多いのがストレスです。愛犬も人間と同じようにストレスを感じると様々な障害が出てきます。愛犬がストレスをため込まないように快適な飼育環境づくりは飼い主さんにとって重要な役割です。

特にトイレや寝床などは愛犬が無防備に過ごす場所ですので、人の出入りが多い入り口付近や外の音が響く場所はさけて、家族団らんで集まるリビングなどの一角に設置してあげるのが落ち着きます。犬は群れで行動する生き物ですので、家族から孤立するとストレスを感じやすいです。人の気配がする場所に寝床を設置してあげるのがお勧めですよ。

逆にトイレは落ち着いて足せるように死角などのへやの隅を利用して作ってあげると成功しやすくなります。

犬の脱毛症のまとめ

犬の脱毛症の治療方法や原因について紹介しました。犬の脱毛症の原因は様々であり、その原因によって対処方法も異なります。原因の特定が大切ですので、愛犬に脱毛が見られた場合には早めに動物病院を受診してくださいね。

そして、サプリメントなどをうまく利用して愛犬の健康をサポートしてあげることもおすすめですよ。

執筆者:國澤莉沙先生

愛玩動物飼養管理1級、ホームドッグトレーナー1級、小動物看護士等の資格を所持。

つくば国際ペット専門学校・ドッグトレーナーコースを卒業後、つくばわんわんランドの飼育員として5年間勤務。現在は主婦として、育児をしながら動物系の記事を執筆しております。猫・犬ともに大好きです。