犬のアカラスの原因・症状、予防するための5つのポイント【動物看護士執筆】

犬のアカラスについて

竹内COCO先生

動物看護師、トリマー

アカラス症という犬の皮膚病を聞いたことがありますか?もしかしたらあまり聞き慣れない言葉かもしれません。アカラス症とはアカラス、もしくはニキビダニ・毛包虫などと呼ばれる寄生虫が起こす皮膚炎のこと。

このアカラスは通常どの犬の皮膚にも住み着いている寄生虫です。人の皮膚にもいるので、別段悪い寄生虫ではありません。

ですが、このアカラスが何らかの原因によって異常繁殖してしまうと、アカラス症という皮膚炎を起こしてしまうのです。

症状

  • 脱毛
  • フケ、落屑(皮膚の薄い皮が剥がれ落ちる状態)
  • 赤み
  • 痒み
    などの症状が挙げられます。

初期にはそれほど痒みはありません。最初に見られるのは脱毛やフケです。脱毛した部分が赤くなり、弱っている皮膚が二次的に細菌感染を起こすと痒みが現れることが多いのです。痒みにより、犬は自分で舐めたり噛んだりしてしまうので傷になり、さらに悪化してしまうことも。

アカラスは、毛包虫という別名があるだけあって、毛穴に潜り住み着いています。悪化してくるとすぐに見つけられる寄生虫ですが、初期の綺麗な脱毛時には、皮膚表面の検査をしても見つけられないことも多いものです。

発症年齢

通常、若齢で発症することが多く、ほとんどが生後3ヵ月~半年で発症します。18ヵ月以内に発症するものが若年発症性ニキビダニ症に該当します。若齢で発症した場合には、軽度で治まり、ほとんどが自然に治ることが多い皮膚病です。

厄介なのが成犬になってからの発症。この場合には完治させることが難しくなり、長年付き合っていく皮膚病となってしまうことがあります。

発症部位

若齢で発症した場合には、口や目の周り、手足の先など局所的に出ることが多く、軽度であることがほとんどです。成犬になってから発症してしまった場合には、若齢の犬と同じで局所的に症状が出ることもありますが、全身に広がってしまうことが多いのです。

進行も速く、悪化してくると化膿して膿が出たり出血したりします。こうなると先程お伝えしたように弱った皮膚に細菌が感染してしまいさらなる悪化を招いてしまいます。

このようにアカラス症は、初期段階に軽い脱毛だと軽視していると、深刻な皮膚病になってしまうことのある厄介な皮膚病なのです。

犬のアカラス症の原因

では、このアカラス症が発症してしまう原因とは一体なんでしょうか。アカラスという寄生虫は通常健康な犬にも寄生している、いたって普通の寄生虫です。

その寄生虫が異常繁殖してしまうということは、犬にとってなんらかの健康被害が起きていることも考えられます。アカラス症の原因として考えられるものをご紹介しましょう。

○母犬からの感染

若齢で発症する犬の多くが、母犬からの感染だと言われています。母犬は懸命に子犬の世話をします。密接な関係にあるので、母犬がアカラス症にかかっている場合、子犬にも感染してしまうのです。

また、子犬はまだ免疫力が弱く感染しやすいもの。自然に治るというのは免疫力がついてきたから治るということも考えられます。

ちなみに、母犬と子犬のように密接な関係でない限り、アカラス症の犬からうつるということはほとんどありません。犬のアカラスが人にうつることもないので、心配する必要はありません。

○免疫力・抵抗力の低下

通常であれば、アカラスが異常繁殖することはなく、適度な数を保って共存しています。ですが、犬の免疫力や抵抗力が低下していると、アカラスは異常繁殖してしまいます。免疫力や抵抗力は年齢と共に落ちやすくなるので、高齢の犬が発症しやすいというリスクもあります。

アカラスだけでなく、普段なら打ち勝つことのできる病気や菌にも負けてしまうことになるので、免疫力や抵抗力の低下には注意が必要です。

○皮膚炎にかかっている

アトピー性皮膚炎や、膿皮症、脂漏症になっている犬は、皮膚の状態が良くないので、アカラス症を発症しやすくなってしまいます。また、悪化しやすくなる傾向があります。

皮膚のバリア機能が低下しているということは、免疫力が低下しているのと同じこと。アカラスの異常繁殖を抑える力が弱まっているからだと言えるでしょう。

○基礎疾患を持っている

甲状腺機能低下症やクッシング症候群など、内分泌性の基礎疾患を持っていることが、アカラス症発症の原因になるとも考えられています。実際これらの基礎疾患を持っている犬は通常の犬と比べてアカラス症にかかりやすいようです。

○遺伝

アカラス症に感染しやすい遺伝的要素を持っている犬もいます。そのような犬は、感染のリスクが高く、また、完治がしにくいと言えるでしょう。

アカラス症になりやすい犬種

犬種を問わず、どのような犬でもアカラス症は発症します。特に挙げるとすれば、

・子犬
・柴犬などアトピー性皮膚炎を起こしやすい犬種
・内分泌疾患になりやすいダックスフント,ミニチュアシュナウザー,ゴールデンレトリバ ー、トイプードル、柴犬などの犬種

これらの犬に発症のリスクは高くなります。

犬のアカラスの治療方法

成犬になってからの発症は、完治がなかなか難しいアカラス症。治療には1ヵ月~数ヵ月はかかることもあると考えておきましょう。治ったと思っても治療を止めると、また再発してしまうこともあります。根気強く治療を行うことがポイントです。

ですが完治しないと悲観することもありません。治療法には次のようなものがあります。

◆駆虫薬

まずは、アカラスの駆除として駆虫薬を使用します。アカラスの治療薬として、確定されているものは残念ながらありません。ですが、イベルメックやミルベマイシンなどのフィラリア駆虫薬が有効であるとされています。

現在最も効果的とされているのが、2016年に発売された「ブラベクト錠」という、ノミ・マダニの駆虫薬。チュアブルタイプでおいしくたべて3カ月ノミ・ダニを駆除できるというCMを見たことがある方もいるでしょう。

このブラベクト錠のフルララネルという成分が、アカラスの駆虫に有効だという論文が発表され、多くの動物病院で使用されています。また、フィラリア予防薬による駆虫よりも駆虫率が高いということもわかっています。

どのような駆虫薬がよく効くかは、その犬によって変わってくるので、必ず獣医さんの指示を受けて投与してあげてくださいね。

◆薬浴

アカラス症の治療として薬浴を行うこともあります。アカラス症を発症し、弱っている皮膚に、二次的な感染として細菌感染が起こることは多いものです。

細菌感染を起こしている場合には、クロルヘキシジンや過酸化ベンゾイルといった成分が含まれているシャンプーで洗ってあげます。

また、脂漏が多いことも、毛包環境によくないので、脂漏症を起こしている場合にはその管理も必要です。過酸化ベンゾイルや硫黄サリチル酸を含むシャンプーで週1~2回薬浴します。この二つは毛包の洗浄作用もあるので、アカラスの減少にも期待できるとされているものです。

シャンプー剤も症状によって使用するものは変わってきます。皮膚の状態に合っていないものを使用すると、悪化してしまうこともあるので、シャンプー剤についても必ず獣医さんから処方されたものを使用しましょう。

◆飲み薬(内服薬)

駆虫薬の他に、飲み薬も併用して使用されます。細菌感染を起こしている場合には悪化を防ぐため、抗菌薬や抗生物質の投与を行うことがあるでしょう。

◆基礎疾患の治療

ホルモンバランスの異常や、糖尿病などの内分泌疾患が原因で起きていることもあります。その場合には基礎疾患の治療も重要です。高齢であれば、様々な原因が考えられるので、アカラスが増殖する原因が何かを突き止めるのは難しい場合もあります。

基礎疾患があるときには、皮膚の治療だけではなくそれらに対してもアプローチしていく必要があるのです。

アカラス症にならないために、予防や日ごろのケアの5つのポイント

成犬になってから発症すると厄介なアカラス症。まずは、発症しないようにしてあげることが一番です。アカラス症にならないためのポイントをご紹介しますので、しっかり予防してあげましょう。

○免疫力の低下を防ぐ

まず、なにより気を付けたいのが免疫力の低下です。免疫力が低下すると、様々な病気にかかりやすくなってしまいます。

アカラスも免疫力が低下すると増殖しやすくなるもの。高齢になるほど自然と免疫力は低下してくるので、特に気を付けてあげましょう。

○食事の見直し

栄養不足もアカラス症を発症しやすくなってしまいます。質の悪いドッグフードは、免疫力の低下や筋力の低下、内臓疾患など様々な弊害をもたらします。高栄養のフードを与えてあげましょう。

○サプリメント

フードだけでは補えない栄養素をサプリで補うのもおすすめです。サプリメントは薬とは違うので、副作用の心配もなく、長期的に与えることができます。ただし、成分にはきちんと安全なものが使われているか確認してくださいね。

EPAやDHAなどのオメガ3系多価不飽和脂肪酸には抗酸化作用があるので、老化の原因となる活性酸素を除去してくれます。

また、内側から免疫力を高めるには、免疫細胞を活性化させることのできるアガリクスを含んだサプリメントもおすすめです。キングアガリクスは人が飲むこともできるサプリメントなので安心ですよ。

○ストレスを与えない

運動不足や、飼い主さんとのコミュニケーション不足、室内環境など、様々なことで犬はストレスを受けていることがあります。

免疫力の低下を招く原因の一つがストレス。愛犬の様子を普段からよく観察してあげて、何かストレスを受けていないか気にかけてあげましょう。

○こまめな皮膚チェック

万が一、アカラス症にかかってしまったとしたら早期治療が、とても重要です。そのためには愛犬の皮膚チェックはしっかりとしてあげましょう。

ブラッシングは、愛犬との楽しいコミュニケーションの一つでもありますよね。普段からしっかりと皮膚の状態を確認してあげましょう。

そして、脱毛を見つけたら、ただの脱毛だと楽観視せず、早めに動物病院に連れて行ってあげてください。

犬のアカラスのまとめ

成犬になってから発症するアカラス症は、少し厄介なものです。良い薬もできてきているので、完治しないというわけではありませんが、それでも再発することも多く、治療には根気が必要になってきます。

まずは、愛犬の体調管理に力を入れて、アカラス症が発症しないような元気な体作りをしてあげてくださいね。

執筆者:竹内CoCo先生

経歴:大阪コミュニケーションアート専門学校ペットビジネス科ペットトリマーコース(現在の大阪ECO動物海洋専門学校)卒業。

ペットショップ勤務を経て、現役動物看護士。動物病院で勤務している立場から、「正しい知識を持ってペットと幸せに暮らしてもらいたい」という気持ちで正確な情報をお届けします。